第4話合宿

夏も近付く八十八夜。

6月、地区大会を控えた演劇部部員7人はハイエースに乗り、合宿に向った。


自然と戯れ、自然のモノを食べて演技の糧にするためだ。

もちろん、向う合宿先は舞台があり、他の高校の演劇部も集まる。

お互いに稽古のやり方を勉強するのだ。


T女子学園の高校は、演技と言うより宝塚のパクリだった。

踊って歌って。


衣装にも拘っていた。


K高校の演劇部部員の稽古の出番だった。

金谷は天使の羽とワッカを頭に乗せて、何やらセリフを言っていた。

武田は、ずっと緑の草っぱ。


前回の報復配役で、武田はワカメ役でセリフはない。

しかし、井口はワカメ役の武田を少し哀れんでセリフを与えた。


「わーかめ、すきすきっ!エースコック!」

だった。


他の高校の演劇部は嘲笑していた。


神様役の元木は、それがツボり笑って演技にならない。


顧問の石神は、舞台からハケさせた。


晩ごはんは、自分達で作らなくてはいけなかった。

6月の蒸し暑いなか、森を彷徨い食物を探した。


金谷、元木、武田は網で魚を獲った。

井口、亀山、半沢は山野草で神田はヤマモモを採ってきた。


さて、7人は困った。

この食材をどう食べれば良いのか?


取り敢えず、火起こしの場所で魚を焼き、山野草は煮た。

ヤマモモは、生で食べる事にした。


お隣の高校の演劇部の好意で、塩コショウをもらった。


ヤマモモは酸っぱかった。

では、魚と山野草の煮付けを皿に取り分け食べようとした。


『ウグッ!くっせぇ。誰が食うかこんなもん』

全員がそう感じた。


「先ずはレディーファーストだ。半沢、亀山食べろ!」

と、武田が言った。

「そんなの別に良いよ!気にしないで武田君食べて」

「お、オレは今夜は良いんだ。部長!食べて下さい」

「僕はせっかく、魚を釣った3人に食べてもらいたい」

と、井口はやんわり断る。

「か、金谷、お前……」

と、元木が言うと、

「食えん!オレは騙されねぇぞ!絶対に食えん!」

金谷の気迫に押された、元木は武田に矛先を変える。

「なぁ武田。オレも食うから、先にお前から食べろよ!」

武田は、女子の気を引きたいので皿を口に近付けた。


『くっせぇ〜。これ、半煮えかしら。もしかしたら、葉っぱが毒?』


武田は迷った。

「武田、オレは食ったぞ!美味しかったぞ!」

と、元木は陰で皿の中身を捨ててから言った。


「で、では頂きます。……う、うんめぇ!」


「えっ、ホントかい?武田!」

と、井口が言った。

「うん、ホントホント。美味しいよ……くせぇけど」

7人は魚と山野草の煮付けを食った。


「美味しい!」


翌日、全員、下痢になった。


「もう、トイレットペーパーが紙ヤスリ状態。石神!なぜお前は平気なんだ?」

「せ、先生は胃腸が強いんだよ!」


石神は、昨夜はカップラーメンを食べていた。


急きょ、7人は病院へ運ばれ食中毒と診断された。


石神は監督責任を問われて、保護者から相当言われた。


夏合宿は下痢と言う結果で、自然から得たものは生煮えは食中毒を起こすと言う知識を得ただけであった。

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