令歴645年5月12日 LINEグループ『大化』
◀ 『大化』(メンバー数:5)
【5/12(日)】
藤原「決行日は6月12日、場所は
葛城「ま、待って下さい! 三国の調の儀って、まさか、大王の御前で!?」
藤原「そうだ。」
佐伯「何もそんな、派手な場所でわざわざやらんでも……暗殺ならもっと目立たんようにこう、夜道を歩いてる時に闇討ちするとかでエエんとちゃいますの?」
藤原「駄目だ。暗殺といってもこれは只のテロ行為ではない。権力者の交代を目的とした、明確なクーデターだ。入鹿の首をとり次第速やかに、奴が謀叛を企てていたという証拠を大王にお見せする手筈になっている。それゆえ、一部始終は大王の目の前で行われる必要がある。」
佐伯「え、入鹿が謀叛を企てていたという証拠って、そんなものがホンマにあるんですか!?」
藤原「無論、そんなものはない。私が捏造するに決まっているだろう。」
葛城「捏造って……後から普通にバレるんじゃないですか?」
藤原「捏造だと騒ぎ立てる入鹿本人は、その時にはもう既にこの世にいない。死人に口無しというやつだ。」
佐伯「あかん。もうこれホンマにどっちが悪者かわからへん……」
藤原「何度も言うが、勝てば正義、敗者こそが悪なのだ。我々が正義となる為には何としても、確実に入鹿の息の根を止める必要がある。」
葛城「あれ……鎌足さんって、こんなサイコパスな性格でしたっけ……?」
藤原「私も、入鹿には並々ならぬ恨みがあると言っただろう。それに今の我が国の政治は、もはや完全に腐りきっている……本来、大王に納められるべき米や貢物を、奴らは民から掠め取り、あまつさえそれを自分たちの為に使い、蓄え、今や蘇我氏は天皇を凌ぐほどの富を手にしている。このような悪しき体制は、ただちに改新されるべきなのだ。これからは我が国も隋に倣い、律令法に基づく国家の法体系を整えていく必要がある。その為にはここで何としても蘇我入鹿を打ち滅ぼし、古き世を終わらせなければならない。」
葛城「うわあ、なんか鎌足さんが難しい話をし始めた」
中大「あー、うん。それな。律令制な。もちろん知っとるで。ちょうど俺も前々から同じこと思とったんや。うん。まあとりあえず入鹿はなんか色々腹立つから、ぶっ殺さなあかんねん」
佐伯「こっちのアホは絶対わかってへんな……」
【佐伯がメッセージの送信を取り消しました】
山田「↑家政婦は見た |д゚)」
佐伯「山田さん、ちょっとタンマです」
中大「何や、またスタンプの送信ミスかいな」
佐伯「はい、申し訳ございません」
山田「そういう事にしておいてやろう(・∀・)ニヤニヤ」
佐伯「ホンマ助かります」
藤原「では、計画の話に戻ります。」
藤原「大極殿で行われる三国の調の儀には、大臣である蘇我入鹿のほか、中大兄皇子、蘇我倉山田石川麻呂殿、そして私を含む皇族・豪族らの計二十名と、加えて高句麗・新羅・百済の使者らが出席する予定となっています。」
佐伯「あれ? 皇子と、鎌足さんと、山田さんの三人は儀式に出席しはるんですか?」
葛城「なあんだ。てことは、儀式に出席しない僕ら二人は、あくまで準備のお手伝いとかですかね?」
藤原「いや。むしろ入鹿の暗殺は……佐伯、葛城。君たちが先陣を切るんだ。」
佐伯「へ?」
葛城「どういう事です?」
藤原「大極殿は、武器の持ち込みが基本的に禁止されている。出席者である我々三名は全員、入口であらかじめ入念なボディーチェックを受ける事になるため、入鹿を殺すための武器を携帯する事ができない。」
佐伯「ほな、どうするんですか?」
藤原「そこで、一計を案ずる。この『三国の調』は、先ほど言ったとおり、高句麗・新羅・百済の三国が、貢物を大王に献上する儀式だ。」
葛城「はい」
藤原「その貢物が入った大型の木箱の中身を二つ、儀式の開始前にあらかじめすり替えておき、かわりに剣を持った君たち二人を忍び込ませる。そして儀式の最中、頃合いをみて君たちが貢物の箱の中から飛び出し、手にした剣で入鹿を斬殺する、というのが大まかな流れだ。」
葛城「え!?」
佐伯「冗談でしょ!?」
中大「なんかトロイの木馬みたいやな。おもろいやんけ」
葛城「いやいやいや! なんで下っ端の俺らが一番、責任重大なポジションなんですか!」
佐伯「そうですよ! そしたら皇子や鎌足さんらは、一体何をするんですか!」
藤原「私と皇子は、君たちが木箱から飛び出した瞬間に入鹿を取り押さえ、動きを止める。」
中大「ほう。俺らが入鹿を羽交締めにしとる間に、お前ら二人がザックリやるわけやな」
葛城「そんな! 無理ですって!」
佐伯「堪忍してください!」
中大「おうお前ら、何ビビっとんねん。男やったら根性見せんかい」
葛城「んな事言われても!」
佐伯「それに、貢物の中身をすり替えるだなんて、一体どうやるんですか! 絶対にバレますよ!」
山田「その点については、わしから説明しよう!( ・´ー・`)ドヤア」
藤原「先ほども言った通り、山田殿は現在、朝廷の倉の出納、貢納の収受などの要職を担っておられる。ゆえに、今回の高句麗・新羅・百済の三国が貢物を献上する三国の調の儀式においても、その貢物のチェックや保管を担当しておられるというわけだ。山田殿にご協力を頂ければ、直前に貢物の中身を二箱分すり替えておく事は容易い。」
山田「わしの説明セリフ取られちった(´・ω・`)」
藤原「なお、三国の調の儀式の中盤において、山田殿は大王への上表文を読み上げる事となっている。そして、君たち二人が箱から飛び出して入鹿を始末するタイミングというのが、山田殿が上表文を読み上げ始めた、まさにその時というわけだ。」
中大「まさにアッと驚く奇襲攻撃やな。入鹿の奴、腰抜かしよるで」
葛城「まず俺らの腰が引けますよ……」
佐伯「そもそも、僕らが箱の中に入ってたら、山田さんが喋り始めても聞こえへんのとちゃいます? しかもそれぞれ別々の箱に入ってたら、出るタイミングかてピッタリ合わされへんし、無理あるでしょ!」
藤原「木箱の中に潜り込む際、剣と一緒にスマホを持ち込めば良い。」
佐伯「ええ!?」
葛城「現場でも、LINEで連絡取り合うんですか!?」
藤原「そうだ。このLINEグループを使えばいい。」
佐伯「んなアホな……」
山田「IT社会ってやっぱ超便利ね(∩´∀`)∩」
葛城「箱の中にいる僕らはともかく、儀式に出席してる鎌足さんたちは、どうやってスマホ見るんですか! 儀式の最中にスマホ出してたら、流石に目立ちますって!」
藤原「我々は笏の裏に、スマホを張り付けておけば良い。流石に、山田殿は上表文を読み上げている間、スマホは出せないが。」
佐伯「絶対バレるでしょ……」
中大「ゆーて画面暗めにしといたら意外とわからへんモンやで。俺も割としょっちゅう式典の最中とかにLINEのツムツムやってるから大丈夫や」
葛城「流石にメンタル強すぎませんか?」
藤原「なお、万全を期すために当日、入鹿が大極殿に入り、儀式が始まったと同時に、我々は板蓋宮の通門を全て封鎖します。中大兄皇子のご命令とあらば、衛門府の兵たちは必ずそれに従うでしょう。」
中大「おう。まあ、俺の日ごろの人徳のお陰やな」
佐伯「恐喝の間違いでは……」
【佐伯がメッセージの送信を取り消しました】
山田「<●><●>ジー」
藤原「計画の大まかな流れは以上です。何か質問は。」
葛城「あの、なんか既に冷や汗が止まらないんですけど」
佐伯「僕ももう不安で手が震えてきました……」
中大「お前らには既に『やります』と『殺ります』以外の選択肢は無いんやで」
藤原「君たちがしくじれば、ここにいる全員の命はない。我々は既に一蓮托生である事を忘れなきよう。」
山田「わしら五人ゎ……ズッ友だょ……!!(*´ω`*)」
中大「まあ、葛城と佐伯は当日まで精々、剣の練習にでも励むんやな。事が成功したら、褒美も好きなだけやるさかいに」
葛城「うう……」
佐伯「なんてこった……」
藤原「それでは各々、抜かりなきよう。全ては、我が国の夜明けの為に。」
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