ある女の一生

幼高(おさ たかい)

第1話 ゆい

ゆいは朝のコーヒーと共にほとんどが太ったということに気づいた。周りにはゴミが散らばってないが冷蔵庫の中にはゴミがある。脳みその中のゴミはゴミを再生産してレコードのジジジというノイズのように切り裂かれた空間から今まで顔も知らなかった同居人を作り出す。同居人の名前はなんであったか、それは分からないがきっとゆいであっただろう。しかし、ゆいはゆいで無くなる時があった。ひまりという敬語で話す女の子であった。しかし、それもゆいであったのだから仕方がない。切ないが仕方がない。(ちくしよう!憎い!憎くないけどな。)そう思いながらゆいは流行りの音楽を歌い始めた。ゆいは歌いながらひまりの歌い方に似ているなと自分で思った。

「ちょっと待って」「そんなことなくね?」「私絵上手くないか!?」「気持ちいよな描いてるよ」と呟きながらゆいは絵を描いているが、言葉尻を捉えてヒステリーを起こすが反動でベッドから動けなくなる時があった。ゆいは手元にあった『アンチオイディプス』をちょっと開くとルイボスティーを飲み始めた。ゆいのなかのひまりは「まだ動かないんですか?」と聞いてくる、返答する必要はなかった。それはゆいなのだから。ゆいは以前死んだ時からこの地点に転生した。転生したらゆいだったのだから情けない。前世ではゆいであったが、それは規定されたゆいであったためやりやすかった。自由はなかったが、代わりにクラスの中の特異点としてのゆいとして動けていた。

ゆいに憧れる少年もいたが、彼はストーカーになった。彼は革命に憧れたが、本当の革命はどこにもなく、ゆいは革命的に感じられたが実際のところそれはクラスに規定されたゆいであるため、ゆいは本当の意味でゆいとしてではなく、憧れそれ自体も作られたゆいであった。だからゆいは死ぬことにしたが、現在のゆいは不安からか逃れることに成功はしていたものの、ゆいは上手くゆいゆいしくできなかった。ゆいのスタイルは絵だったが、それこそまさに規定されたゆいであることを、ゆいはしらない。ゆいがゆいらしいと思う時、それはひまりの声を聞くようなものであり、別のゆいの声を聞くことではなかった。別のゆいが話すことを道具として見る時それはひまり以下の扱いとしてであった。ゆいがゆいとしている時は、本当はトランポリンの上で飛び跳ねるときだった。ゆいが飛び跳ねる時、どしんどしんと音がする。トランポリンはコンクリート製ではなく木製だったからだ。ロフトで飛び跳ねる訳には行かないから本当のトランポリンに乗ろうとした。それは成功したが、代わりにトランポリンのたくさんの死体が生まれたため、結局どしんどしんとゴジラのような振る舞いをすることにした。

ゆいがおじさんのちんちんを見る時、なんのアフェクションも起きなかったが、人並みに感動する時もあった。ゆいは感動すると泣ける性質だったが、映画を見るのが趣味であったゆいにはちょうど良かった。ゆいは教育を受けていたが、本当の意味でゆいがゆいらしくあるのはこの経験のおかげだった。ひまりは冷笑や否定ではなくむしろ同一化されていたゆいだった。ひまりを客観視して作るよりも平然とゆいらしくしているときが最もひまりらしかった。ゆいはどこにいるのか、それは分からない。ゆいとは誰なのだろう。

そう思いながらゆいはマイナンバーカードを持つ。いつ、子宮をとるかと友人に聞かれていたなと思いながら性別の欄を見て、ひまりに要らなくなった子宮を、プレゼントしようと思った。ゆいは眠くなった。ゆいは常に眠かったが、いちばん眠かったのはゆいでいる時だった。ひまりに馬鹿にされながら、仕方なく眠りにつく。

ゆいは異世界に転生した!ゆいのおっぱいは毛むくじゃらになり、指の間から爪が生えていた。ザムザはゆいに聞いた。「汝、隣人を愛せよ」ニュートンが即座に反応しゆいに聖水をかけると怒号を飛ばし、そのままフリントロック式ピストルでゆいを射殺したのはまさに適切であった。ひまりはまた敬語キャラのくせに敬語をやめてバカにする。「弱いんじゃない〜?」

ひまりの言う通りだと思いながら起きると、夢の中には太った友人であるまさるが出ていたなと思った。そう思いながら友達におすすめされた佐藤優と池上彰の対談をゆいは「ほえー」と口に出しながら賞味期限が切れたものを好き嫌いの多いゆいは「もぐもぐ」と、言いながら食べた。ゆいはまた絵を描き始めたが、ゆいの思うところ、それは天才的なワークになる予定であった。ゆいは金がないから仕方なく夜職をしようと思い、ガールズバーの求人を調べ始めた。ゆいはゆいらしい私生活をしていた。ゆいは今日は20時間寝ることになるのだが、今日こそ起きてやることをしよう!と、精神科から昨日ブッチしたことを咎める電話が届いていることに今気づき、鬱になった。ゆいになったのはいつだろう。

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