一人暮らし
高校を卒業した小夜は、隣の県の大学に合格したのをきっかけに一人暮らしを始めることとなった。
若い女の一人暮らしであるうえに周囲からは内気だと見られていたからか、親や友人たちからはおおいに心配されていたが、実際の合格の知らせとあらかじめ立てておいた大学生活の計画を語ったことによって許可が下りほっと胸を撫で下ろした。
なるべく朝日を見る時間帯を避けたいという思いから、受ける講義はできるだけ午後のものを選んだ。どうしても避けられない場合は午前中や朝方であっても受け入れたが、できるだけ遅く起きるように努めた上で、総じて昼頃に起床することが多くなった。
新しくできた友人には朝早くの講義が少ないのを羨ましがられる一方、普段から欠伸を漏らしがちなのもあってぐうたらなやつと認識をされていた。しかし、早起きは三文の徳という言葉に中指を立てている小夜にとって、友人の見方はむしろ救いだった。
「うん、そうなの。できれば一生だらだら暮らしたいなって思ってるんだ」
「ほほぉ。そりゃ実に理想的な生活ですなぁ」
学内の食堂で呆れ気味な目でこちらを見る友人に、満面の笑みで応じつつ、アイスティーをストロー越しに吸い上げる。その際、窓ガラス越しに空が橙がかりつつあるのを目にして嬉しくなる。
これからは、私の時間。
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