第4話
目の前に並んでいる、分厚いステーキを頬張り、酒を流しんでいるフレンドであるグレゴを横目に、自分の分の飯を食う。
野生み溢れる獣臭を隠そうと香辛料を使用したステーキに舌鼓を打ちつつ、温いエールを喉に流し込む。
「もう少し質の悪いのを想像していたが、意外と美味いな。ゲームで飯を味わう為だけにやる人がいるのも分かるな」
「ここは他の店より少しばかし美味いからな。町の中央にある適当なバーや冒険者ギルドよりも美味いから、食うならこのギルドがおすすめだな。」
「なぁ、グレゴ。ジェイはギャンブル勝ったと思うか?」
「あぁー、多分勝ってそうだな。最初の方見てた感じ順調そうだったしな。流石に所持金を全部スルなんて事ないだろ。」
「だよな。流石にあいつもある程度、引き際とか分かってるだろ。」
しばらくの間、雑談をしつつ、料理を味わっていると扉が開く。
入ってきたのは、くすんだ金髪と顔の上半分を鉄のマスクで隠し、黒色のポンチョと艶を消した黒い革鎧をつけた男。
「すいません、待たせてしまって。」
「俺らは別に構わんよ。グレゴも俺も飯食ってたしな。ギャンブルに勝ったのか?」
「クックック、聞いて驚くといい。今回のギャンブルの成果は……所持金全部スッてしまいました……。お金貸してもらってもよろしいでしょうか?」
そう言って、ジェイは見事な土下座を披露して、グレゴに金をせびり始めるも、頭を踏みつけられてる。
ジェイのギャンブルでの悪癖で破滅しかけるのは笑えるが、今の状況的時代には笑えない。
「始めたばかりでお金まだありますよね?倍に…いや、3倍にして返してみせますんで、どうかお金を。」
目の前の馬鹿は何を言ってるのだろうか。初めて少ししか経っていない初心者に金をせびるβテストプレイヤーなんていう見苦しさしかない光景に俺はため息をついてしまう。
「すまない、ジェイ。貸せる金がないんだ。俺も色々と資金が入り用でな。」
「そ、そんな……」
「まぁ、諦めることだ。それよりお前、今回の名前はまだマトモな名前だな。ギャレットだったか。よかったよ、変な名前とかに設定してなくて。」
「名前の話は触れないでくれ。今後はどうするんだ?まさか資金調達のためにプレイヤーを襲うとかやめろよな。」
「それは全員でやるぞ。冒険者ギルドで適当な依頼を受けて金を稼ぐついでになるがな。」
駄目だ。俺が他プレイヤーにボコボコにされる姿が容易に想像ができる。正直武器も目立つし、リスクも高いから断ろうとするが、金はあればあるだけいいのは事実だ。それに説明はされてないが何らかのメリットもあるかもしれない。
「…分かった。やるしかないな。めぼしい標的とかいるのか?」
「そう言うと思って、下調べはある程度。狙い目なのが一組いますね。四人組で常に組んでるのは三人、1人はコロコロ変化してるから、恐らく臨時募集とかで集めてるかと。」
「ちょうど良いじゃねぇか、しっかりとした連携取れるのは3人。どうやって打ち崩すか。それに、人数不利背負ってた方が戦いも楽しくなるしよ。あと、稼ぎも増える。問題は場所とタイミングだな。いつにする?」
「しばらくはここを拠点にしているみたいなので、標的が次に町に戻った時に。幸いここの狩場は少ないですからね待ち伏せにしておきますか。」
こいつら、スルスルと襲撃の流れを組み立ていきやがる。βテストから数えて、何回目の襲撃計画なんだよ。
「なぁ、これ何回目の襲撃なんだ?妙に計画を立て慣れてないか?」
「NPC含めていいなら50は超えてると思うが……ジェイは覚えてるか?」
「まぁ、そのくらいですね。そのうち返り討ちにあった回数は5回未満くらいですね。まぁ、今回の獲物に1人くらいはβテストプレイヤーがいると思われるので、油断はできないですね。」
これだけやってもBANされてないから、この行為自体は運営も黙認されているのだろう。とはいえ、こいつら戦って人から掠奪することしか頭にないか。
「思ったんだが、こんな行為してデメリットとかないのか?お前ら何か隠してないか?」
「あー、あるにはあるんだが。まぁ、関係ねぇよ。勝って目撃者も始末すればいいんだから。」
「おまえ、この感じ絶対なんかあるな。ジェイ!こいつ何を隠してやがる。」
「はぁ、実は言うとですね。NPCをやりすぎると賞金首になります。なった場合はプレイヤーとNPC混成の討伐隊が組まれたり、プレイヤーが徒党を組んで合法的な略奪のために、襲撃をかけてきたり。この場合、生き残りや第三者に顔を見られたら、手配書に載るので顔は絶対隠しましょうね。それに、多くの施設や町などが使用困難になります。」
「で、プレイヤーをやりすぎるとどうなる?」
「間違いなく晒されて、好戦的なプレイヤーに執拗に付け狙われたり、同業に狙われたり、どこに行っても、戦いからは逃れることができないかもしれませんね。それに、悪名が広がりすぎると、まともな攻略等には誘われないでしょうね。あと、殺し損ねた対象がギルドに駆け込んで討伐依頼を出されたりしたら、賞金首になるので。」
「それと、返り討ちにあったり、襲撃された時に金半分と所持してる素材アイテムも殺した奴に渡るから気をつけろよ。」
予想はできていたが、思ってたより多いぞ。こいつら、こんなデメリットだらけなのによくPKやろうと思ってんな。だが、この2人がやると決意するメリットも何かある筈だ。
「それで、お前ら2人がやるって言うからにはそれなりのメリットがあるんだろ?やるだけ無駄ってこともなさそうだしな。」
「安心しろ。殺した奴が持ってる素材アイテムをランダムで入手できるし、所持金も三分の一ほど入手できる。それに、貰える経験値がそこそこあって、特定クラスの解放条件の一つになっている。」
「そういうことですので、今の段階でちまちま弱いモンスターを倒しつつ、PKした方が良さそうなんですよね。」
「とはいえ、やりすぎるなよ!お前ら、いつか恨み買いすぎて討伐隊を組まれそうだしな。」
2人の言動や行動指針に呆れつつ、少し冷めたステーキを食べつつ、赤ワインを注文して、襲撃計画を忘れないように記憶していく。
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