第2話

 広大な荒野が視界を埋め尽くし、焦げ付くような熱気が地面から立ち上がり、照りつける日の光と一緒に俺を苦しめる。熱や空気、触覚まで忠実に再現されているのには驚きだが、今ではこの暑さのせいで最新機能を憎み始めてきている。


「何時になったら、町に着くんだ。このままでは荒野で干からびて死ぬのがオチじゃないか。」


 暑さと終わりのみえない歩みに心を挫けそうになりつつも、丘を登り切ったとき、高音で威嚇をするように吠える獣の声が近くで聞こえる。


「コヨーテか!?逃げるには手遅れか。」


 俺は慌てて銃を取り出し、警戒するが俺を狙う獣は未だ姿を見せてこない。焦りと緊張で徐々に精神が摩耗していくのを感じながらも周囲を見渡す。


 獣たちが、この膠着状態に痺れを切らしたのか1匹が正面の岩陰から飛び出し、俺の喉元を噛みつこうと飛びかかってくる。

 

「ちっ、俺はテメェの餌じゃないんだぞ。」


 小言混じりに、サイドステップで右に避け、胴体に狙いをつけ、2発撃ち込み、体制を崩し、倒れるもすぐ立ちあがろうとする。

 それと同時に隠れていた2匹目が飛びかかり、俺の左腕を鋭い爪で引き裂いてくる。


「クソッ、2匹目か。流石に1人じゃ厳しいぞ。」


 2匹と睨み合いつつ、冷静に戦況を分析する。俺はまだ体力的には余裕がある。1匹目のコヨーテは銃弾を胴体に2発受けて、息を整えるために奇襲してきた2匹目の後ろに隠れているが、あと1発で倒れそうではある。


 問題は無傷の2匹目と銃の残り弾数だ。恐らくだが、無傷の状態から倒すには胴体に3発は最低でも必要。そうなると1発外すとほぼ確実にリロードを挟む必要があるが、目の前のコヨーテたちがそれを許してくれるかは、賭けになるな。


 睨み合いつつ、手負いのコヨーテに銃口を向けた瞬間、無傷のコヨーテが正面から歯を剥き出しにして、強襲する。遅れてもう1匹が動きはじめる。

 避けるのは間に合わない。だが確実に手負いの1匹は仕留めさせてもらう。


 ファニングショットで1発を手負いのコヨーテに、2発目は迫り来るコヨーテに狙いをつけるが、地面に吸い込まれる。3発目を撃とうとしたタイミングで、コヨーテが喉に噛みつこう迫り来る。


 俺は必死に体を右側に倒れ込ませるように避けるも左肩を噛み、重い体が俺を押さえ込む。咄嗟に左腕でなんとか首を守ろうと押しのけるが、このままだと首を噛みちぎられて、リスポーンするのは馬鹿でも分かる。


 残りは2発。これをコヨーテの頭になんとか撃つしかない。だが2発でやれるのかは分からない。賭けになるが、やるしかない。


 俺はコヨーテの脇腹に銃を押し当て、発砲する。急な痛みで怯んだ瞬間、左腕でコヨーテを全力で押しのけ、倒れ込ませる。

 

 コヨーテが立ち上がるよりも早く、俺は押しのけた勢いのまま、体を左に片手でコヨーテの頭に照準を合わせて、薬室にある最後の弾を撃つ。


「なんとか倒すことができたか……コヨーテ2匹にこのザマじゃあ、先が思いやられるな」


 2匹目のコヨーテが光の粒子となっていくのを確認し、立ち上がって、リロードをしていく。


「さて、戦利品を確認するとしようかな。」


 倒した場所には毛皮が2つ、牙と爪が1つずつ落ちている。俺は全てインベントリに収納し、アイテム一覧から、コンパスを取り出して方角を確認して、目的地があるであろう方角へと目を向ける。


 

 

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