第1話
照りつける日に目をくらませつつも、辺りを見渡すと、閑散とした荒野が広がっており、近くには車軸が折れたのか、放置されている馬車のようなものとその車輪であろう残骸、遠くの方には複数の黒い塊が動いている。
恐らくあれはこの地の原生生物の一種なのだろうが、距離が離れずきていて、確認もできない。
「こんな荒野からスタートなんて、運がなさすぎるだろ。せめて近くに街か村、せめて集落でもあれば良いんだが。」
一通り辺りの状況の確認を終えた後に、有用な物資がないかを探らなくてはと思い、馬車のようなものの中に入ってみる。
中は意外と埃を被っておらず、場所の上に覆われた布も破れもしていないのは幸いだ。構造や中にある物から推察すると、恐らくチャックワゴンだろう。
「多少斜めにはなっているが、寝られるスペースはありそうだな。それに食べられそうな食糧もある程度残っているし、かなりボロいが簡易的なサバイバルセットまである。それにしても…」
サバイバルセットの中身を漁ってみると、火打石や刃こぼれしたナイフ以外に、雑な地図に小さなコンパスが入っている。
「北に町があるとしか書いてないのは適当すぎるだろ。」
コンパスは壊れてないようで、しっかりと北を指し示している。ここからの距離が不明な町に、今から行くのは危険すぎる。今日の間は装備の確認と準備、それに先にプレイしている友人に連絡をとる必要がある。
壊れた馬車と周りに落ちているもので、野宿と物資の準備を終えた頃には、既に夕暮れとなっていた。
焚き火の前で集めた物資を確認していると、フレンドチャットに連絡がとんできた。
[今どこにいる?こっちは合流できたぞ。迎えにいこうか?]
[荒野にいる。町に行く予定だし、合流したいから迎えにきて欲しい]
[了解。町に着いたら、町の名前教えて欲しい]
フレンドとの合流予定をたてつつ、インベントリを開いてみる。中には初期武器であろう拳銃とボロボロの革製ホルスター、予備弾薬が30発のみ。
町に着くまでに襲われる事を考えると、どうにも心許ないが、ないよりはマシなはず。
ホルスターを腰につけ、銃を収めると気分はまるでガンマンだ。まぁ、ウエスタンハットも首にバンダナもないが、始めたてなんだから、いずれ手に入るだろう。
暫くすると、完全に日が没し、荒野を月明りが照らしていく。俺は焚火をそのままに、傾いたチャックワゴンの中で横になりつつ、ステータスを確認するも変化はない。
インベントリのアイテム一覧を確認しながら、これからを思案しながら日が昇るのを待つした。
生き物がこちらを観察する気配と、何度か寄ろうとする気配を感じつつも、日が昇る頃にはそんな気配は消え去っていた。
準備は整った。これ以上、ここに留まる理由もない。すぐに北に向かい町でフレンドを待つため、未知が広がる荒野に歩を進めていく。
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