第54話

駅まで歩いたが、電車はすぐには来てくれない。ベンチに座りながら待つことにした。


雪が降り出した。あー寒い。


「これだから田舎はイライラすんだよ」


「私も都会っ子だけどそんなに電車を駆使してないからよくわかんなーい」


「てか寒い。青森やっぱ寒いわ!」


「凍傷になって死ぬかもね」


「まさか、それはないな」


ふと、まりこの手を触ってみた。


「お前手冷たすぎ」


ぎゅっと握ってみた。華奢で綺麗な手だ。俺の手は乾燥してがさついてんだろーな。


「ねー手袋ないの?」


「ねーよ」


「じゃーカイロは?」


「ありませーん」


俺は便利屋ではないんで、なんにも持ってません。


「じゃーこのままでいい!」


手をつないだまま、しばし駅ですごす。

寒い、早くこないものか。



ようやく到着したら電車に乗り、椅子に座るとすぐにまりこは眠ってしまった。疲れたのか?仮眠得意だしな…こいつ。羨ましい限りだ。

うとうとしていたら、いつの間にか到着。まりこはちゃっかり起きた。


「うっわ、雪やべーよ」


「寒い」


「ん、手繋ぐぞ」


「うん」


「今日なに食いたい?」


「なんでもいい」


「じゃ、適当にする。それより、俺の仕事っぷりはどうよ?」


「うん、園長から聞いたよ。頑張りすぎ注意だしー。私にも仕事のこと話してよね?」


「眠いからめんどい。仕事のことは持ち込みたくねぇーの」


「ふーん。動物病院のときは話してたのに?」


「言うまでもなく日常的なことしかしてねーよ?」


「そ!柊先生頑張ってるぅー。私も緒方さんと頑張る!」


「んで?緒方さんの仕事っぷりはどーよ?」


「やばいね!使える。てかーめちゃ力持ちっ」


「そう、あの人怪力だから。俺と代わってほしい」


「むりむりー!私の緒方さんだもーん!できる女よね」


「妬けるな」


「いいだろー!」


「緒方さん怪力のくせに事務もできんだよなぁ。むかつくやつだ!」


「こっちに遊びに来てもいいんだよ?」


「やだよ。めんどいしー。はー、やっと着いた」


「長い道のりだったー。これ毎日とかきつくね?」


「そうですけど」


「…まぁ、私の力じゃどうすることもできないけど」


「ま、そーですけど」


頑張る以外選択肢ねーんだな、これが。

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