第36話
吉越宅に到着した。俺の実家からはわりと離れている。小洒落た感じの一軒家だ。
「私が先に入って説明するから…外で待っててよ!」
段取りを勝手に決めるまりこ。こいつすぐ仕切りたがるんだよな。
「待っとくから、早くしろよ」
「オッケー。任せて」
なんか、すごい自身があるような顔なんですけど。この間めそめそしてたのはなんだったんだ?まりこはさっさと自宅へ入った。
それから5分程で呼ばれた。
「入って」
なんか、顔こわばってますが…。気にせず中に入る。
あれ?誰もいない?
「お邪魔します?」
「中で待ってるから早くして」
命令されたんすけど。
まりこに誘導されて、居間へ。そこには、ご両親がいらした。
「連れてきたよ」
「はじめまして。柊亮伍です」
「そこに座りなさい」
社長やってるからか、偉そうな父。遠慮なくソファーに座る。うちにはソファないぞ。
「君は、まりこよりも背が低いじゃないか。それに、遠慮がないな」
「すみません。身長は遺伝です」
「そ、そんなこと言わないで!」
まりこはおろおろしてる。でも、ま、いいだろう。これは面接。試されているんだ。
「僕は、まりこさんとどうしても結婚したいんです」
「どうしても?」
「はい。僕の夢は動物病院を開業することです。しかし、それは難しいことです。まりこさんは有能で、技術的にも、そしてこの美貌です。必ず成功します。いつしか彼女の経営する動物病院で僕は働きたいという夢になっていました」
まりこは固まった。ご両親も黙った。
「彼女は有能なので、このまま誰かの元で働くというのはもったいないと思います。僕は彼女をサポートします。彼女の理想とする動物病院を一緒に作りたいんです」
「ま、まりこは…動物病院をやりたいのか?」
「そ、それは、もちろん」
「お願いします、まりこさんと結婚させて下さい」
念押しに深々と頭を下げた。
「君、柊くんと言ったか?頭を上げなさい」
「はい」
「まりこの才能を生かしたいということだな」
「はい。もちろんです」
「まりこ、彼はお前のサポートが本当にできるのか?」
まりこ、ここはちゃんと言ってくれ。という思いでじっと見た。
「もちろん!彼なしでは私は生きていけない!もし反対するなら、縁を切ります!」
…そこまで言わなくても。大袈裟すぎる。
「…そうか、わかった。まりこの仕事のためだ、仕方がない」
「ありがとうございます」
なんとか許してもらえた。
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