第32話

しばらくしたら、亮伍の父が帰ってきた。


「おお、亮伍、待ってたよ!」


「待ってたのはこっちだし」


相変わらずそっけない亮伍。親に対してもなの?私は猫を抱っこしながら、挨拶した。


「はじめまして、吉越まりこです」


「綺麗な人だなぁ。亮伍の好みなべっぴんさんだ」


「変なこと言うなよ」


「いいじゃないか。今日は串カツ残ったから、これを晩御飯にしよう」


自分の話になってる。柊父も亮伍に似てるけど、性格まで似てるとか超うける。


「まりこさん、亮伍なんてちんちくりんだけどいいのかしら?」


柊母は言いたい放題である。


「余計なこと言うなよ」


「別にどうでもいいです」


「なんだよそれ、ひど」


晩御飯の時間になって、弟さんが帰って来た。


「誰だよ!それ」


これまた亮伍に似た弟さんだ。ちょっと亮伍より身長高いけど。そしてちょっとチャラい。


「は?結婚すんだけど?」


「ま、まじかよ!」


「聞いてねーのかよ」


「あら?私言ったわよ?」


柊母はしれっとしてお茶を飲んでいる。


「き、聞いてねーし!」


「じゃあ今紹介してあげるわ。まりこさんよ」


なんで柊母に紹介してもらってんだか。


「何者だよ」


どういう質問だよ。


「そういえば、どこで知り合ったのかしら?合コン?」


「なんでだよ。同じ動物病院ですけど?」


「まあ、そうなの?」


「亮介、串カツ食べないか」


柊父が串カツを机に並べ始めた。なんてマイペースなの。


「食うし」


変な感じ。そして私の膝には猫が乗ってる。これも変な感じ。


「まりこさんは獣医なの?」


「はい。で、彼は助手です」


「まあ、まりこさんのほうがすごいのね!」


「そうです!」


「おい、俺を見下したな」


「兄貴なんてバカだからやめといたほうがいいよ」


串カツを食べながら言う亮介くんは、なんかバカそう。


「バカなのはお前だろが。いい加減他の仕事見つけろよ」


「ねえ、亮介くんってなんの仕事してるの?」


「あーこいつ劇団員だよ」


「俺は照明やったり舞台装置作ったりしてんです。すごくないですか?」


「すごくねーし。人がいないときだけ駆り出されるくせに」


「ちげーし!いつも俺は信頼されてるし!」


「意味わかんねー」


これは兄弟喧嘩だよね。私には兄と姉がいるけど、年離れてるから喧嘩とかしたことないな。

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