2人の実家

第30話

仕事帰りにふと思った。そろそろ結婚したい、かも。


市役所で婚姻届けを貰って、まりこの帰りを待つ。そもそも、結婚なんてしない!って言いそうな奴だからな。


とりあえず言ってみたところ、いいけど親が反対するってことだった。まりこの親の話は一度も聞いたことがなかったので、縁を切ってるのかとも思ったことがあったが…違ってよかった。


「おし、うちの親には電話で言っとくよ」


「は?ちゃんと行って挨拶しないとだめだよ!」


律儀だ。まじめちゃんだな。


「まあ、報告的な?」


「もう夜の11時だよ?遅くに失礼だって」


「大丈夫、誰か出ると思うし」


ということで、早速自宅の電話にかけてみた。ら、


「はい、柊ですが」


この声は、父だ。


「亮伍だけど、結婚することにした」


「そうか。いつの彼女とだ?」


「今のだよ。なんで元カノとなんだよ」


視線を感じたが、構わず話した。まりこは元カノの話になるとキレるからな。自分だって足助の話するけど。


「そうか。たしか美人さんなんだろ?一回見たいな」


「そのうち連れてく」


「母さんにも言っとくよ」


「ああ、うん」


ゆるーっと話したあと、電話を切った。


「で?なんで元カノの話?」


やっぱりそこにつまずいてんじゃねーか。


「いやいや、いつの彼女と結婚すんだって言われて」


「なにそれ。そんなに彼女いたんですかーそーですかー」


明らかに怒ってる。


「今の彼女って言ったし。で?まりこの家はいつ行く?」


「え!私の家?どうしよう、いつがいい?」


「いや、休みもらわないと無理だけどな」


「そっかーそうよね。あ!緒方さんにも言ってないよ?私付き合ってることも言ってない」


「それはどうでもいいよ。同じ職場じゃ働けないし、俺が異動になりそうだな」


「は!そうか!考えてなかった!」


「ひど。俺の家はいつでもいいと思うけど」


「亮伍のお父さんは仕事忙しくないの?」


「普通。パートだしー」


「は?え、なんの仕事?」


「スーパーの惣菜作ってる」


「え、意外なんだけど」


「見下してるー親父いじめだー」


「だって、なんかイメージと違ったから」


「どんなイメージだよ」


確かによく言われてた。大学以外は成績優秀な俺であったが、その父は全くもって普通の、ただ揚げ物作るのが好きなおっさんである。母はボランティア団体の偉い人なんだが、そんなお金をもらえるわけでなく、節約して生活をしていたのが懐かしい。俺は高校入った瞬間からバイトしてた。

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