第8話懐古主義
記憶の糸を手繰って、人生を伝う。
そんな瞬間に出会う鮮烈な出来事が、記憶に残るのは、イマージュの膨れ上がる膨張率の関係性だ。
いいことが起きると、消えるつらい記憶の忘却率は、経験によって差異を生じる。
積み重ねる。
思考を練りこむ。
練りこんだ先に映るルーペに、木工の接着する継木の後に開かれた人形の顔。
どこか自身を重ね合わせるその面影に、昔、どこかの街であった祭りの情景を見た。
懐かしむ気分で、人形に触れると、記憶の糸口が見えてくる。
潜り抜けるように、経験を積んでくると、イマージュの総体性における大きな意識のような、かがり火、とっかかりはいつも原体験を超える措定値、そう、火なのだ。
蒸気する頬と、熱量の定発する実態の自在性に、捉えられる虚像のスペース。
空白になる音階を避けると、見えてくる生体性の謎を、生物的によじらせて、肉体をブラッシュアップしていく。
いわば、心の成長には、メモリーがいる。
増幅していくために、経験を積んで、何度もメモリーを書き換える過程で、火が必要だ。
原体験を措定するスパークリングワインのようなポップなキャッチの様に、パッと光る網膜の裏で、謎めいた動きをするエネルギー総体であり記憶と経験と情熱を混ぜると、必ず弾ける力が、未来へと向かっていく時間上のエネルギー。
宇宙の空洞が埋まる瞬間のような喜びが、この三つから練られると、人形を屋台で買った思い出に、アートセンスのような輝きが生じる。
忘却率は、宇宙の空洞に切れ込んでいく流星群の一礫にねじれて、スクリューショットのような軌道を描き、まるで絵画のような爆発的交感を起こし、捉えどころない着想に、要は、感動して、アップデートしていく日常を充足する手段を与える。
それが、懐古主義。
昔を懐かしんで、今を生きるというのであり、見方を変えれば、情報をアップデートして、時間軸をずらすこと。
すなわち、懐古主義とは、ただ懐かしむという定義ではなくここでは、記憶を新しくして古い傷を緩和する、そんな作用があるという意味でとらえる。
祭りの人形は、もう古くなって、段ボールの箱に消えていく。
でも、大事な人に買ってもらった思い出は、確かに記憶にあって、そっと情熱という火によって時々、時間を超えて、思い出される。
このアートセンスこそライブフル、別名の短縮形で「ライフル」と呼びたい。
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