卒業

一輪の花と卒業の札を胸に、墓に手を合わせていた。

思い慕ったわけでもない。ただ一年と少しだけ、おなじ委員会に所属していただけだ。

少女の無念も僕には知ったことではないし、あったとしても背負えるものではない。

あの湿った空間をやっと抜け出せると思うと清々するが、皆よりも早く卒業することを選んだ少女を、羨ましいと思わなかったわけではない。


実際、少女の訃報が知れ渡ってからもまぁひどかった。

宮森さんをいじめていた人たちが次のいじめのターゲットにされたものの、人数が多いことや、もとから学年カースト上位であったため、宮森さんの100分の1にも満たない誹謗中傷が届いた程度だった。

僕は、「宮森さんとは何の関係もない。たしかに図書委員の仕事はしていたが、実際、何かを誰かに流したりなんてしていないだろう?」と言い張ることで、難を逃れた。


君に「トリックオアトリート」なんて言われたら、何を渡せば許されるだろうか。

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壊れた少女 埴輪モナカ @macaron0925

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