第3話 わがまま
……ぼくは、何?
『……天使、どうかしたか?』
主がお声を掛けてくださった。
『……ぼく、わからないんです。ぼくはなんですか?この『何か』はなんですか?どうやったら、どうしたら、』
『落ち着け、今まで通りで良い。何も考えるな。』
『けど、それじゃ、ぼく……っ!』
なんとかして主に『何か』を伝えたかった。
主なら受け止めて、解決してくださるって。
それが、だめだった。
主はぼくの頭を撫でるのをやめ、掴む。
『__!?』
そして目を合わせる。
初めて見た、主のお顔。
真っ白な肌、長い金髪、黄金色の瞳。
穏やかに微笑んでいるのに、目が、笑っていない。
『私は我が子を愛している。天も地も、愚かな人間も、忠実な天使も。』
『ある、じ……』
『私は、愛している。故に、愛には責任を持たねばならない。私の子どもたちは皆大きな役割を持っている。違反者には罰を与えなければならない。わかるか?』
『罰……?』
『ああ、これが、最後の仕事になるだろう。』
サァッと血の気が引くのがわかる。
ぼくは、求めすぎたんだ。
なんて、愚かだったんだろう。
これが最後かぁ。
なんだろうこのもやもや……この『何か』。
主から見放されて__
__あ、寂しい。
ストンッと胸に落ちてきたその言葉はぼくを納得させるには十分だった。
じゃああの人間も、あの人間も……レンも、寂しかった?
あ、寂しさをなくしてほしかったんじゃない?
なら……『友達』がほしいとか?
『主、ぼくは天使ですか?』
『まだ、な』
『……最後に、一つ、お願いがあります。』
主は視線だけぼくに向ける。
『ぼくを______くれませんか?』
主は目元を和らげ、そっと微笑んだ。
その笑顔は、愛おしい我が子のわがままを許容するような、巣立っていく我が子に向けるような、どこまでも優しい笑顔だった。
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