三頁ー悪夢ー



ハーロックは使いを終えて村に帰る途中だった。


「ハーロック」


その途中、声を掛けられた。フレッドだった。ハーロックは首を傾げる。


「フレッド? どうしたんだい?」

「……エデンの様子が可笑しかった」


深刻そうな顔でフレッドは言う。ハーロックは何も応えない。


「あのエデンが、あんたに凄く怯えていたように見えたんだ。ハーロック、あんたは何か知ってるのか? エデンに何かしたのか?」


フレッドはハーロックを睨みつける。するとハーロックは、暗い笑みを浮かべた。すらりと腰にさしていた剣を抜き取り、フレッドの胸に突き刺す。


「……っ!な……」

「……エデンが悪いんだよ。そんな事を言うから」


剣を抜かれ、地に倒れるフレッド。内蔵を負傷した、出血も酷い。これでは、と考えていると、頭を踏みつけられた。ぐり、と踏みにじると、ハーロックは飽きたとばかりにフレッドから離れていく。


「俺のエデン……今度はどう可愛がってあげようかな……」


そんな事を呟きながら、ハーロックは何事もなかったかのように村へと帰って行った。



悪夢の国の王の間に案内されたエデンと宵月は、玉座に座る人物と対面していた。薄い青色の髪を長く伸ばし、同じく薄い青色の瞳は涼やかだ。そんな中性的な美貌の持ち主、アザゼルは、人の良さそうな笑みを浮かべて言った。


「ようこそ、悪夢の国へ。それで、私にどんな用事かな?」

「此処の近くの村から調査を頼まれました。この国に来て行方不明になった旅人が大勢いると……」


エデンはフレッド達と集めた情報と、この国が豊かである為帰らないのだと結論付けた事を話した。因みにピースの事についても僅かに話しておいた。アザゼルは真剣に話を最後まで聞き、ふむと一息吐いた。


「まさか行方不明と騒がれていたとは……。誤解を解くために動かないといけないな。それと、ピースの事について、私はなんの情報も持っていない。すまないね」

「いえ。お話が出来て光栄です」


するとアザゼルは、じっとエデンの瞳を見つめた。酷く透明な薄い青の瞳と目が合う。何かを見られている気がする。だが、不快感はない。


「……あの?」

「随分疲れているみたいだね」


エデンは何と答えればいいか判らなかった。隣にいる宵月も黙りこくっている。アザゼルは使用人を呼ぶと、にこやかにこう言った。


「お客人だよ。部屋を用意してあげて」


頭を下げると素早く去る使用人。エデンと宵月をお構いなしに、アザゼルはにこやかに微笑んだ。


「今日はうちに泊まって疲れを癒しておくれ」

「……いや、でも」

「いいから。ね?」


アザゼルに半ば強引に城内の宿泊を決められ、エデンと宵月はぽかんとするのであった。




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