二頁ー悪夢ー



「最近、悪夢の国に行った旅人が、そのまま行方不明になっている」


村の人々は口々にそういった。その中でも若い女性が、酷く悲痛な面立ちでエデン達に伝える。


「私の伴侶が、悪夢の国に行ったきり帰ってこないんです。どうか、どうか彼を探してはくれませんか?」


「かなり怪しい所だよね、悪夢の国」

ブラウンが口を開いた。護もフレッドも考え込んでいる。エデンは思案すると、皆に向かって言った。


「悪夢の国は、俺と宵月が調査してくる。フレッド達は、此処に待機して貰えるか」


ぎょっとする三人。フレッドが頭を掻きながら言う。


「あのさあエデン、そういう自己犠牲精神な所だよ?」

「違うんだ。危険だったら直ぐさま逃げる。安全だったら、お前達宛に手紙を書いて知らせる。その方が効率がいいと思う」


本当はハーロックに会いたくないからだが、苦しい言い訳ではないだろう。じっとフレッドを見つめていると、フレッドは仕方ないなと溜息を吐いた。


「危険だったら絶対引き返す事。約束ね」

「嗚呼、約束だ」


エデンとフレッドは指切りをした。懐かしいなと考えつつ、それはそうとと宵月に向かって問う。


「勝手に決めてしまったが、構わなかったか?」

「構わない。俺はエデンと一緒に行く」


宵月は頷いた。それに何処かほっとして、エデンは立ち上がる。目指すは悪夢の国。行方不明の人を探す為、そしてそこにピースがないか確かめる為、エデンと宵月は向かうのだった。



悪夢の国に着くのに、そこまで時間は掛からなかった。悪夢の国は、まるで先進国を思わせる程、環境が発達した国だった。予想とは違う豊かな国で驚いていると、若者に話し掛けられた。


「驚いちまうだろ? 悪夢の国って結構評判良くねえのに、いざ来たら楽園みたいな所でさあ。楽しんでいきな」


ひらひらと手を振って去っていく若者を見てから、顔を見合わせるエデンと宵月。一先ずふたりで、人々から話を聞く事にした。


「此処はなあ、文字通り夢みたいな国だよ」

「オレ、昔は悪事に手を染めてたんだけどさ、此処に来て改心して、足を洗ったんだよ」

「伴侶も連れていきたいんだがよ、此処の居心地が良過ぎてついつい……」


幸せそうに笑う者。苦笑する者。皆が皆幸せそうだ。


「んで、この国の王様が凄い美人でさ……アザゼル王って言うんだけど」


エデンは少し、この国の王に興味が湧いた。自分も楽園の王として、どんな事を成しているのか興味がある。すると、宵月がじっとエデンを見ている。どうしたのだろうか、首を傾げると、宵月は言った。


「会いに行ってみるか、アザゼル王に?」


顔に出ていただろうか。エデンは気恥ずかしくもなりながら「嗚呼」と頷き、一番大きな建造物、王の城へと向かった。




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