四頁ー傭兵ー
廃れた荒地を歩いている。何者かが暴れ回ったのだろうか、木々も滅茶苦茶になぎ倒され、地面は抉られ、元がどんな場所だったか判別もつかない。そんな荒地を、宵月はひとりで歩いていた。
「まだ彼奴とは合流出来ていないのか」
そう声を掛けられた。振り向くと、闇の男が立っている。確か彼は、クラウスとエデンが説明してくれた男だろうか。じっと見つめていると。彼は冷めた声で言った。
「何故、そこまでして彼奴に協力する」
宵月は答えない。代わりにふわりと微笑んだ。それを見てクラウスは忌々しそうに舌打ちをする。
「……まあ、我にはどうでもいい事だ」
クラウスは背を向けて去っていく。その背中を暫く見つめていた宵月だったが、彼もまたエデンを探す為に歩き出した。
*
街の案内を終え、エデンと焔丸と烏丸はがらんのの元へと戻った。がらんのはセレーネと共に修行をしているようだった。セレーネの動きは素早く、的確だ。それをがらんのは余裕綽々と言った体でいなしていく。がらんのの動きは徹底された戦闘マシーンを彷彿とさせた。
「休憩」
軽く腕を回してがんのが言うと、セレーネはそのまま仰向けに倒れた。荒い呼吸を繰り返している。相当身体を動かしたのだろう。
「がらんの旦那あ、戻ったぜえ」
焔丸が声を掛ける。汗ひとつ流していないがらんのは此方を見ると、面倒くさそうに口を開いた。
「エデン、どうやらお主に客人のようじゃ」
「客人……?」
エデンが不思議そうに言うと、「ほれ」とがらんのが指を指す。そこには丁度此方へ向かってきている宵月の姿があった。
「……宵月!」
エデンが駆け寄る。宵月はエデンに微笑みかけた。
「宵月、合流出来てよかった」
「……」
「宵月?」
何故か、宵月は喋ろうとしない。そこでがらんのが、
「なんじゃお主、喋れんのか」
と口を開いた。目を見開くエデン。そこに烏丸が言った。
「師匠、何故判る」
「ただの勘じゃ」
エデンは宵月を見つめる。すると宵月は、寂しそうに笑った。そんな彼にエデンは肩を掴む。
「宵月、前からお前は何か可笑しい。何をしてるんだ、答えてくれ!」
それでも宵月は応えない。本当に、声が。
そこに、劈く様な叫び声が聞こえてきた。その場に居た全員がはっとする。セレーネは飛び起き、がらんのは欠伸をし、焔丸と烏丸は獲物を構えた。エデンが周りを警戒する。
「なんだ、この声は」
「魔獣じゃの。偶に街に押しかけてくるんじゃ」
「呑気に言ってていいのか!?」
「かなりの数じゃ。全員構えい」
がらんのの一言に、全員が声がした方向へ走り出した。そこでエデンが目にしたのは、今にも人々を襲おうとしている、暗い紫色をした様々な魔獣の姿だった。
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