三頁ー傭兵ー
「なんだあ、エデンの奴。ブラウンの事は覚えてるのかよ」
「兄者、記憶が戻りつつあるのやもしれぬ」
ブラウン達と合流したエデンを見て、焔丸と烏丸が話している。
「エデン、今度何方が多く魔獣を狩るか、勝負しようー」
「魔獣……?」
エデンが不思議そうにするとブラウン達はきょとんとする。焔丸は四人にエデンが記憶喪失である事を伝えると、四人は文字通り吃驚仰天した。
「あの、がらんのの次に最強なエデンが記憶喪失!?」
フレッドが叫ぶ。待て。聞き慣れない事を言われた。エデンがあのがらんのの次に最強とは、どういう事か。確かにエデンは剣術を嗜んでいる。でもそこまで強いかと言われると、正直判らない。
焔丸がやる気のない顔で、呆れながら言う。
「だからおれ等も困ってるんだあ。まあ暫く、エデンは傭兵業休業だな」
「まじかあ……」
護が残念そうに言う。残念がられても、とエデンは考えるが、言う訳にはいかない。早く宵月と合流して、ピースを集めなければ。
皆と何気ない会話をして、この世界の事情を知っていく。最近、魔獣という存在が活発化していて、人間達に危害を加えている事。それで傭兵業が盛んになった事。聞いても聞いても、ピースに関すると思われる情報は得られなかった。
「エデン」
そんな中、肩を叩かれはと視線を向けた。ハーロックが、いつもの爽やかな笑顔を此方に向けている。
「少し込み入った話があるんだ、いいかい?」
「……嗚呼、構わない」
なんだろうかとハーロックを見つめる。彼はにこりと微笑んで、じゃあ此方に、とエデンの手を引いた。
*
連れてこられたのは、とある路地裏だった。人気はない。そこにエデンはハーロックと向き合い、不思議そうに眺めている。
「どうしたんだ、ハーロック?」
「エデン、俺は君が好きだよ」
「えっと……ありがとう?」
「そうじゃなくて」
ハーロックは苦笑した。ふるふると首を横に振ってから、そっとエデンの顎をくいと持ち上げる。
「俺はエデンを愛している」
「……」
どういう事だろうか。全く理解が追い付かない。エデンとハーロックは親友で、しかも此処はif世界だ。色々可笑しい。
それに、と。夜中色の髪を思い出す。
「ハーロック、俺は記憶喪失で」
「構わないよ。俺が思い出させるから」
「……ハーロックは俺の親友だ」
「……親友?」
一瞬、ハーロックが仄暗い笑みを浮かべたように見えた。ハーロックはエデンに迫り、エデンは壁に追いやられ、身体が密着する程近付く。そこで危険を感じ、エデンは口を開いた。
「止めてくれ、ハーロック」
「なんで? 俺はエデンを愛してる」
「すまない。お前の気持ちには応えられない」
「愛してるよ、エデン」
「他に好きな人がいるんだ!」
ハーロックの動きが止まった。その隙に彼を押しのけ、エデンはハーロックから解放される。胸がやけに高鳴りながら、エデンはハーロックに告げた。
「俺には好きな人がいる。だからお前を愛する事は出来ない」
「……」
沈黙するハーロック。彼の表情を見たくなくて、エデンは背を向けて走り去った。ハーロックは無表情のまま、暫くそこに立ち尽くしていた。
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