二頁ー傭兵ー
「エデン兄さん、半分こしよ!」
皆が食事を済ませた頃だった。唯一食後のデザートを頼んでいたセレーネは、エデンにそう笑いかけた。セレーネは自分の頼んだ杏仁豆腐を、不器用ながらに半分に分け、片方を小皿に移してエデンに渡す。
「記憶が戻るよう頑張ってねって言うプレゼント!」
「……」
半分に分けられた杏仁豆腐を見てから、セレーネの屈託の無い瞳を見る、エデンは本当に有難くて、少し申し訳なくて、それでも微笑んだ。
「セレーネ、ありがとう」
「うん!」
にこにことセレーネは笑い、夢中に杏仁豆腐を食べ始める。エデンもスプーンで掬いながら、味を噛み締めて食べ尽くした。
*
エデンの為に街の案内をしてやれ。
そうがらんのは言い残し、セレーネと共に何処かへ行ってしまった。残されたのはエデンと、紫髪赤眼の兄弟だ。
「なんか自己紹介すんのも変だけどよお、おれは
「
タレ目の兄、ジト目の弟。焔丸と烏丸が丁寧に自己紹介する。ふたりは獲物を所持していた。焔丸は鎖の付いた槍、烏丸は矢筒に弓だ。
観察していると、気付いたのか焔丸が説明した。
「嗚呼、此処は傭兵業が盛んでなあ。戦闘技が長けてる人が自然と集まってくる街なんだあ」
「成程」
「兄者も僕も、がらんの師匠の修行の元傭兵となった。セレーネはまだヒヨっ子だがな。師匠には感謝している」
がらんのという人物は、とても信頼されているようだ。やる気のない表情だが、佇まいや姿勢が他の者とは違う、とは考えていた。とてつもない人物なんだろう。
あちこち街を回る。活気のいい街だ。ゴロツキのような連中も、挨拶をすれば気さくに返してくれる。いい場所だ。
「で、此処がおれ達傭兵がよく使うギルドだあ」
焔丸に案内されたのは、街の中で一番大きな建物だった。人も沢山いる。
その中に、見知った顔があった。
「あ、おーい、エデン!」
天然パーマの男が此方に手を振る。それはブラウンだった。他にも、護、フレッド、ハーロックもいる。
「ブラウン、皆……」
エデンは何処か安心感を得て、手を振り返した。
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