七頁ーリンク界ー



「神月……?」


頭の中が疑問で埋まっていく。どういう状況なんだ、これは。神月をどかそうにも、身体が鉛のように重く、上手く動けない。


「エデン、じっとしていろ。筋弛緩薬を投与してある。直ぐに動くようになるから、それまで俺に任せろ」


何を?

問いたかったが、怖いので止めておく。神月はうっとりとした表情で、エデンの頬に触れた。その手には、黒い指輪がはめられている。その指は顎へ、唇へ、また顎に指を滑らせ首、胸板をなぞる。


「神月、何をしている? どうしたんだ?」

「……俺はエデンが好きなんだ。一目惚れなんだ」


真剣な表情で、神月はエデンを見つめる。赤い瞳だ。でも、何かが違う。脳裏に過ぎる"彼"の姿。エデンは抵抗しようと、身体を精一杯動かした。


「暴れないでくれ、エデン……」

「神月っ、すまないが、君の気持ちには答えられない。本当にすまない」


必死に説得しようと、エデンは神月に声を掛ける。神月はぎゅっとエデンを抱きしめた。抱きしめてから、小さく息を吐く。


「なら……少し早いが、仕方がないな」


神月は服を脱ぎ出した。ぎょっとするエデンを構うことなく、生まれたままの姿になると、何処からか液体の入った小瓶を持ち出した。蓋を開けながら、神月は優しく微笑む。


「大丈夫。怖くない。薬は甘く作って貰ってる」

「は……!?」


その小瓶がエデンの口元に運ばれた時だった。


「ぜえっ! 待てっ! 莫迦神月っ!」


ばたんと大きな音を立てて、扉が開かれる。息を切らした白雪と、その後ろには宵月の姿があった。白雪も宵月もぎょっとする。


「あんたっ、それ薬!? 月影の奴のか!? こっちに寄越せ!」

「……っ!!!!」


慌てふためく神月。状況が読み込めないエデン。白雪と宵月が走り寄る時には既に、神月は


あろう事か薬と思われる液体を自らの胃に流し込んでいた。


「……は?」

「へ?」

「な、な、何やってんだお前ええええええええええええ!!!???」


白雪の絶叫が響く。すると、くたりと神月がエデンに寄りかかった。そんな神月からエデンを引き剥がして庇う宵月と、神月を支え様態を見る白雪。


「お前! 何飲んだ!? 吐き出せるか!?」

「……んぁっ」


白雪が神月の身体を揺さぶると、甘ったるい声が聞こえた。神月の様子が可笑しい。頬は赤く染まり、瞳はとろんと蕩け、はあはあと熱っぽい呼吸を繰り返している。

これはまさか、


「はつじょ」

「皆まで言うな、宵月……」


遠い目をする宵月とエデン。白雪はと言うと怒りでブチ切れており、怒りを顕にして怒鳴った。


「ええい! 君達は別の部屋で待機してろ!!!」


自ら服を脱ぎ出した白雪を見て察し、エデンは宵月の肩を借りて、そそくさとその部屋を後にした。


早朝。

スッキリした顔の神月と、げっそりした白雪が居たのは言うまでもない。


「月影……コロス」


白雪が最後に声を絞り出した。






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