六頁ーリンク界ー



狡い。


エデンに押し倒される宵月を外の窓の隙間から見て、神月は歯軋りをした。何故彼奴なんだ。何故俺ではないんだ。出会ったのが後だからか?見た目は瓜二つだと言うのに。


悔しいという醜い感情が、神月を支配した。すると、外にエデンが出ているのに気付く。神月は、ふらりふらりと彼の元に歩んで行った。



エデンの帰りが遅い。


部屋のベッドに腰掛けている宵月は、時計を確認して息を吐いた。エデンが外に出て一時間は経っている。とっくに頭が冷えている筈だ。なのに何故、帰ってこないのか。

考えられるのは、エデンが死んでいるかもしれないと言う事だった。実はこの世界にもピースはひとつしかなく、とっくに死亡している。

考えたくもない予想だった。だから、宵月は宿屋から出てエデンを探す事にした。


何処を歩いても、見渡しても、彼は居ない。本当に死んでしまった?ならあの魔法使いは何をしている? やはり、生きているのか?


様々な考えが頭を巡る。すると宵月の中に"機動隊"と言う言葉が浮かぶ。そのまま、宵月は目的地に向かって走り出した。



「誰か居ないか」

「その声神月? 今まで何処行ってたんだよ、仕事全部俺に押し付けて……」


機動隊の本部に行くと、不機嫌な声が返ってくる。白雪が宵月を睨んで、不満がありますと顔に書いてあるようだ。


「いや、俺は宵月だ」

「え? 本当?」

「嗚呼……」


白雪は虱潰しに宵月の全身を見て、やっと納得したのか、大きく溜息を吐いた。


「ごめんごめん。で、宵月、こんな時間にどうしたの?」

「エデンが姿を消してしまった。もう一時間以上も見ていない」

「え、此方は神月が居ないってのに……」


そうぼやいて、ふと白雪は顔を上げた。

「まさか、彼奴……」

「何か判ったのか?」

「いやね、神月が、エデンを攫ったんじゃないかなって……」


宵月の思考が止まった。何故。どうして。と考えるが、さっぱり判らない。

神月あいつは空間転移の魔法が唯一使える魔術師でさ、俺達機動隊の主な拠点エトセトラに転移出来るよう、細工して貰ってるんだ」

つかつかと白雪は地図を取り出し、テーブルに広げる。幾つかのポイントに、黒い星の印が記されている。


「星の印が転移場所。……あいつ、エデンにベタ惚れだっただろ? しかも頑固。我を貫くタイプ。どんな手段も使っても、ね」

「……何処にいると思う?」

「んー……第二支部ではないだろうね。それとキャンプ地も。残された場所で此処かなってのは……休憩用のログハウス」

「向かう、案内してくれ」

「……遠いよ?」

「走る。だから急いでくれ」

「まじで?」

「まじだ」


白雪が仕方ないねと素早く支度を済ませた。外に出ると白雪は此方だよと指を差した方向に走っていく。追い掛ける宵月。


「君走るの早いね?」

「生憎人間ではないもので」

「は???????」



意識を取り戻すと、温もりを感じた。

はとエデンは辺りを見渡す。木造建築の部屋のようだ。そして何故か、上半身が裸になっている。ネックレスもない。

そして、


「……エデン」


神月がエデンの胸元に擦り寄り、微笑んでいた。







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