二頁ーリンク界ー



広場へ到着したエデンとフレッド、それに着いて来た神月と白雪は、人だかりが出来ているのを確認した。


ざわざわと人が賑わっている。その中心には、夜中色の髪をした美男子、宵月がいた。

「あの、俺はシンゲツと言う人ではなく……」

どうやら神月に間違われているらしい。エデンは人混みを掻き分けて、宵月の腕を掴み抱き寄せた。

「宵月」

「……、エデン……」

ほっとした顔の宵月と会えた。澄んだ赤色の瞳と目が合う。それに見惚れていると、人を捌けながら神月がやって来た。宵月が不思議そうに彼を見る。

「お前、名前は」

「……宵月」

不機嫌そうに神月が宵月に問うた。戸惑う宵月にエデンがリンク人の事を教える。成程、と宵月が納得していると、エデンは腕を引かれた。神月にだ。

「エデン。宵月とはどういう関係なんだ」

「どういう……?」

そこでエデンは、まだ宵月を抱き寄せたままだと言う事に気付く。思わずパッと離してしまう。するとぐいぐい神月はエデンの腕を引き、此方に抱き寄せる。きっと宵月を睨みつけて、神月は威嚇した。


「俺はエデンが好きだ。だから諦めろ、宵月」


「なになに、神月の初恋?」

「宵月はまだ何も言ってないでしょ」

人達を追い払ったフレッドと白雪が、世間話のように話している。諦めろとはどういう事だろうかとエデンが考えていると、宵月も宵月で神月を睨んでいる、様に見えた。


「初対面の人にいきなりなんなんだ」

「煩い。エデンは俺のものだ、お前の人ではない」

「いったいなんなんだ、お前は……」


二人共落ち着いてくれ、そう呟くエデンだが、ふたりは聞こえていないらしい。言い合いは止まらない。しかも神月のスキンシップが激しくなってきている気がする。頬を撫でたり、髪を梳いたり、瞳を覗き込む。赤い瞳だ。ただの赤い瞳。


「まあまあ、神月落ち着いて」

「フレッド、離せ」


無理矢理フレッドにエデンから引き剥がされ、不機嫌度が増す神月だが、それを無視して白雪がエデンに言う。

「ピース、って言うの探してるんだっけ? なら月影げつえいの研究所に行くといいよ」

「月影……?」

「この世界で一番の物知りさ。何か判るかもしれないよ」


白雪は丁寧に地図まで用意してくれて、赤丸で囲んである建物へ向かうよう言った。地図を受け取り、礼を言うと、エデンは「行こうか」と宵月に向かって声を掛ける。宵月は、そのまま大人しく着いて来た。


その澄んだ瞳が寂しそうなのは、気の所為だろうか。







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