二章
一頁ーリンク界ー
童顔だが美しい顔立ち、綺麗な鼻筋、薄い唇。アーモンド型の瞳は、とても綺麗な緑色で。長い銀髪は手入れが行き届いており手触りが良さそうだ。
俺は、そんな彼に一目惚れをした。
*
また、白い空間にいた。
「宵月」
突然、後ろから長身の男に抱きしめられる。その男、彼岸は、宵月に擦り寄りながら甘い言葉を囁く。
「今回も、よく頑張ったねえ。ご褒美をあげないと」
まさぐられる手。それに小さく震えながら、宵月は彼岸に視線を合わせずに問うた。
「何故、お前が此処にいる? 此処はなんだ?」
「さあねえ? そんな事どうでもいいだろう?」
行為に及ぶ。宵月は拒否出来ない。それは、初めはただの気紛れで相手をしていた。だがそれで彼岸がつけ上がり、宵月に深いトラウマを植え付けた上で調教した為だ。
「そういえば、私に新しい玩具が出来たんだけどね」
そんな事を彼岸はぼやいていた。混濁する意識の中で聞いていたのを覚えている。
「……でもやっぱり、一番楽しい玩具は君だよ、宵月」
そうだろうな。と自棄になりながら考えて、宵月は意識を快楽に溺れさせていった。
*
「……助けて貰って感謝する」
エデンは頭を下げて礼を言った。目の前には、褐色肌で白髪の長身の男、
「えっと、宵月……? どうしたんだ?」
「ヨル……?」
夜中色の髪の男は、こてんと首を傾げた。何かが可笑しい。宵月が他人行儀な気がする。白雪という人とは、どういう関係なのか。
すると、夜中色の髪の男ははと何かに気付いたように、エデンに話しかけた。
「もしかして、"俺"と瓜二つの人を知っているのか?」
「?」
今度はエデンが首を傾げる番だった。嗚呼成程、と白雪は呟く。そのままエデンは、この世界の二人の勤務先であるという機動隊の相談室へと案内された。
*
テーブルを挟んで向かい合わせに椅子に座り、事の経緯を話すと、納得したように白雪と夜中色の髪の男は頷いた。
「"この世界"はね、時々あるんだよ。自分と同じ姿形をした人が流れ着く時が。そういう人を"リンク人"って呼んでるんだけどね、その宵月って人、此奴……
「リンク人……」
深く考え込みながらエデンは白雪の話を聞くと、ちらりと夜中色の髪の男、神月に視線を移した。美しい髪、整った顔立ち、赤い瞳。全てが宵月そっくりだ。そんな神月も、じっとエデンを見つめている。頬が赤い。どうしたのだろうか。
「……それなら、ピースというものを知らないか?」
「ピース? 神月は?」
首を傾げる白雪。神月はと言うと、ぼうっとした目でエデンを見つめていて、反応がない。
「あのさあ、神月今仕事中」
「……、だな」
愚痴を零す白雪を他所に、ぼそりと神月は呟いた。するとテーブルに身を乗り出し、こちらを覗き込むように見つめてくる。
「お前の瞳と髪は、とても綺麗だ」
「一目惚れかよ」
白雪が吹き出す。ぽかんとしているエデンに、神月は頬を赤らめて見つめてくる。それに戸惑ってしまい、エデンは少し身を引いた。
「あの、神月……さん?」
「神月でいい。エデン、この世界でゆっくりするといい。疲れてるなら、俺が癒す」
「いや、あの、えー……と……」
助けを求めようと白雪を見るが、面白いものを見る目で此方を観察しているだけで白雪は何もしてくれない。ほとほと困りだした時、扉がノックされた。
「入って」
白雪が言うと、肩まで伸ばした茶髪の男が入ってきた。フレッドだ。だがフレッドはエデンを一瞥したのち会釈をしただけで、白雪達に向かっていう。
「おっと、仕事中だった? ……って、あれ? 神月?」
神月が振り向く。明らかに邪魔されて不服、と言った表情で。それを不思議そうに見ながら、フレッドは首を傾げた。
「神月、今まで広場の方にいたよね? 此処来るの早くない?」
「神月は俺と今まで此処にいたよ」
白雪が答える。はっとして、エデンは席を立った。
「フレッド、広場に案内してくれないか」
「えー誰ー、なんで俺の名前知ってるのー? まあいいか、此方だよ」
フレッドの案内の元、エデンは広場へと向かう。
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