五頁ー楽園ー
「で、このべっぴんさんは誰? 吃驚人間と言うのは判ったけど」
護達に説明を迫まれて数十分。「お前等いい加減にしろ」というヘヴンの鶴の一声に、今日は宿屋で休む事にしようと言う事になった。
エデンと宵月は同じ部屋を割り当てられた。鎌鼬によって出来たエデンの傷を甲斐甲斐しく治療しながら、宵月は呟く。
「来るのが遅れて申し訳なかった……。でもこうしてエデンが無事でなによりだ」
「いや、まさか宵月までif世界に来てるなんてな。どうやって来たんだ?」
「……」
沈黙する宵月。何か悪い事を訊いたか、と首を傾げる。
「そうだ。明日はあのケーキ屋にまた行こう。好きだろう、宵月?」
「……嗚呼」
小さく微笑む宵月は、何処か歯切れが悪そうだ。手当をし終わり、救急箱を片付けている彼に、エデンはぼそりと呟いた。
「……こうして、またお前と会えて嬉しい。これからピース集め、頑張って行こうな」
「エデン……」
宵月の表情が晴れる事はない。何か申し訳ないことを言ってるだろうか。そう思案していると、身体に痺れを感じた。熱い。喉が焼ける様に熱い。
がたんと音を立てて床に倒れていた。息が出来ない。苦しい。原因不明の痺れと焼けるような熱さで、視界がぼやける。宵月が身体を支えて声を掛けている様だが理解が出来ない。なんでいきなり、こんな苦しい。
エデンの意識は、そこで途絶えた。
*
エデンが死んだ。
突然苦しみ出して倒れたかと思うと、首をかき乱して息を引き取った。
「お疲れ様でございました。宵月様」
そんな中、突如としてグリが現れる。いつもの笑みを顔に貼り付けて。
「……どうして、エデンは死んだ? そういう"システム"か?」
「さあ。私には判りかねます」
飄々とグリは言う。沈黙して睨む宵月に、グリはくすくすと笑う。
「さあ。王の後を追いましょう。再び代償を頂きますね?」
「……」
トリップする度に代償を払う。そんな事は聞かされていないが、仕方がない。宵月は息を吐いて、それに応じた。
「次は何が望みだ?」
「そうですね……視力に致しましょう。片方で構いません」
「判った。早くエデンの元に送ってくれ」
「かしこまりました」
とんとブーツで床を叩く。魔法陣が展開され、宵月はそれに包まれていった。
*
「今日も異常なし、と」
「手を抜くなよ、
「判ってるよ……君はいつもしつこ過ぎ」
「……どうやら異常なしではなさそうだ」
「は?」
ふたりの人影が銀髪の青年が倒れているのを見つける。
そこからまた、新しい世界での話が始まる。
第一章.完.
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