一章
一頁ー楽園ー
さみしい。
かなしい。
独りは、さみしい。
孤独は、かなしい。
誰か、わたしを見つけて。
そしてずっと、傍に居て。
*
「どうしたんだよ、エデン」
「……えっと…………」
短い黒髪の女性が、訝しげにエデンを睨む。なんだか申し訳なくなったエデンは、よそよそしく彼女の手を取り、起き上がった。
ぐん、と力強く引っばられる。とても頼りがいのある腕だ。女性に言うのはしのびないが。
「まだ寝ぼけてんのか?」
女性は不機嫌そうに腕を組んだ。ラフな服装から除く腕は細身だが引き締まっていて、とても美しいと思う。
エデンは暫く考えてから、恐る恐る口を開いた。
「その……誰だろうか、君は……?」
「はあ? 寝ぼけすぎだろ犯すぞ」
「おか……っ!?」
エデンはプチパニックを起こしている。そもそも、此処は何処だろうか。あの魔法使いは? 宵月は? 様々な事を考えながら、取り敢えずこの女性の対処をしようと考えつく。
「誰構わず犯すなんて言ってはいけない。君は女性なのだから」
「関係ねえだろ、俺達"夫婦"なんだし」
「……」
完全に思考が止まった。聞いていない。それはそれは聞いた事すらない。
「待ってくれ、俺は独身だ」
「あ?」
「……本当なんだ、君を知らない」
じっと見つめ合っていると、女性が大きな溜息を吐いた。そしてどこか納得した様子で、
「ならそうなんだろうな」
とだけ呟いた。その瞳が少し寂しそうに見えたのは、気の所為だろうか。
「俺はヘヴン。取り敢えず帰るぞ」
「帰るとは?」
「ここが何処かもどうせ判らねえんだろ?なら連れて行ってやるよ」
女性、ヘヴンがエデンの腕を掴んでずんずん歩いていく。頭の中がクエスチョンマークでいっぱいのエデンは、"その言葉"を聞いて目を見開いた。
「俺の、俺達の自慢の"楽園"にだよ」
*
真っ白な空間だった。
宵月が気付いた時には、ここに立ち尽くしていた。白い壁と床と天井。それ以外が淘汰された空間。状況を確認しようと辺りを見渡していると、足音が聞こえてきた。
「やあ、宵月」
長身の男だった。ざんばらに切った黒髪に水色と金色のオッドアイ。胡散臭い笑顔で気軽に呼んできたその男、彼岸を、宵月は睨みつけた。
「そんな反抗的な態度取らないの。ほら、おいで?」
びくりと宵月の身体が震える。それを構うことなく、彼岸は彼に歩み寄り抱き寄せた。身長と体格の差で、彼岸の腕の中にすっぽり収まる宵月の身体。その身体をまさぐりながら、彼岸はにっこり微笑んだ。
「私のお願い、ちゃんと出来たね? 偉いねえ」
宵月は何も答えない。応えたくない。無意識に身体が震える。そう躾られてきたからだ。
「ご褒美、欲しいよね?」
彼岸はそのまま宵月を床に押し倒す、身体中をまさぐる手つきが、段々と"彼処側"の方に変わっていく。応えないでいると、彼岸の大きな手が宵月の首を掴んだ。へし折らんばかりに。
「……宵月。返事」
冷えた声。その声に、宵月は首肯するしかなかった。
「愛してるよ、私の宵月」
満足気に笑った彼岸の顔がすぐ目の前にある。宵月は視界を閉じる事も許されずに、ただ襲い来る快楽に身を委ねるしかなかった。
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