第35話 迷惑な人達
執着の凄い相手に対して、どのように対応するのが効果的か分からず、なかなか進まない計画を立てている間にも、ストーカー達に動きがあった。
ストーカー達の転生を確認したうえで、人間には暗部隊、そして魔族にはエルフをつけて、見張っていてもらったのだ。
最初に動きがあったのは、やはり契約も婚約もしていない者達だった。
そもそも、何人いるのかも知らされていない僕には、どれだけの人数がいるのか分からなかったが、僕に見つけてもらう為に、派手に行動しているらしい。
彼らからしてみれば、僕がストーカーの存在を受け入れていたと思っているのだろう。
諦めと受け入れは別物だ。
僕としては、受け入れた事など一度もない。
そして何より一番厄介なのは、彼らが僕の名前を口にし、噂が広まった事で、前世の記憶を思い出していなかったストーカー達まで、僕のことを思い出し始めているという点だ。
それによって僕を見つけようと、神殿を頼る為に神殿との繋がりが深いフール国に来てしまい、ファン達がストーカー達を追っている事で、フール国に人々が押し寄せているようだ。
これについては、王様もなんとかしようとしてくれているが、会った事のない王様に僕関連で迷惑をかけるのは良くないと思い、僕から王様に会いに行きたいと言ってみた。
すると、父様とユハ兄さんが何か考える素振りをした後、首を横に振るが、ヒバリくんだけはすぐに頷いてくれた。
ツガイであるヒバリくんからの許可が出てしまえば、父様もユハ兄さんも止める事はできず、代わりに反対した理由を次々と並べていく。
城は人目が多い事。
神獣が王族に関われば、他国が黙っていない事。
自由の国であるフール国には、他国の密偵が多くいる事。
他国の者は、僕を捕えようとする可能性がある事。
神獣を捕らえ、そのまま神獣を飼い慣らした過去を持つ国が多くある事。
何より、神獣に群れとして認識された国は、経緯がどうであれ繁栄してしまうという事など、理由のほとんどは僕が神獣だからだった。
これらを聞いた僕は、よく考えるように言われてしまったが、数日考えてもヒバリくんが反対しない以上、僕の選択は変わらなかった。
「父様、ユハ兄さん、僕の考えはやっぱり変わらないよ。僕は過去の神獣じゃない。ツガイだっているし、強欲な国が多くある中でも、王様は僕を捕まえなかった。僕、フール国が好きだよ。自由の国……今になって、父様が外の世界を見せてくれようとした理由が分かる。フール国は良い国なんだよね」
「良い国だ。それでも、来る者拒まず去るもの追わずの、中立国を目指している。それはユルにとって、あまり良くない」
「それと、基本的に実力主義の弱肉強食だから、自分の力をちゃんと見せつけないと、すぐに舐められる。それは、ユヅも僕のファンで分かったよね?」
力を見せたら良いのかな。
僕が神獣だっていうのは、もう隠せない。
ヒバリくんとツガイになってから、身も心も大人になったからね!だいぶ育ったんだ!残念ながら、身長はあんまり伸びないけど。
あ、でも……魔族だと思われても困るかな。
「今のユルなら魔族だとは思われないな。神さんの愛が溢れに溢れまくって、誰から見ても歴代の神獣より愛されてる神獣だ。神さんは、愛し子だとしても神獣の選択に口を出さない。けど、ユルのツガイに俺をすすめるくらいには、ユルは特別愛されてる。それはもう……気持ち悪いくらいにな」
ヒバリくん、とうとう気持ち悪いって言っちゃってるよ。
確かに、ちょっと気持ち悪いけど。
だって僕、神様に会った事もないし、話した事もない。
それなのに、こんなに愛されると親か何かかなって思う。
親なら良いけど、全く知らない人からの愛は気持ち悪いよ。
おかげで、ヒバリくんとの夜が濃厚になった!それについては感謝感謝。
「ユル、神さんに拝むのはやめような。あの神さん、喜びすぎて耳に悪い。発狂してる」
周りを見てみるとヒバリくんは耳を押さえ、神殿のエルフ達は蹲ってしまうほど辛そうにしていた。
「僕は悪くないと思う。僕の旦那様と群れを苦しめる神様は……うん、普通に嫌だ。僕の敵だ」
すると、次は慌てているようで、エルフ達は何事もなかったようにキョロキョロと周りを見渡し、ヒバリくんはため息をついた。
その理由は言えないようだが、後から僕には話してくれると言うので、僕からは何も訊かないでおく。
「とにかく、暗部隊には王に伝えさせた。ヒバリ殿が反対しなかった時点で、行く気だったのだろう?」
「うぐっ……ありがとうございます」
「エルフの血が濃い僕も、神殿にいるからか精霊門を使えるようになったし、精霊と契約もできた。ヒバリさんに任せきりにしなくても、僕も協力するよ。あの人達も一応、この世界で最初の家族だしね」
確かに、ユハ兄さんにも精霊はつくようになったけど、まさかユハ兄さんが精霊門を使えるまで、エルフに近づいているとは思わなかった。
精霊王と接触したり、転生する時に神様と会った事があるからかな?あとは、この神殿の影響?父様に何も変化がないなら、エルフの血が濃いからなんだろうな。
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