第25話 ツガイの存在
神獣になった僕は、父様達がどれだけ教えてくれても理解できない部分が出てきたり、前世が同じであるユハ兄さんとも、どこか噛み合わなかったりする。
感じ方の違いと言えばそうなのだろうが、神獣としての僕には理解ができない部分もある。
それに加え、前世が前世であるため、僕は基本的に推し以外の人は嫌いだ。
他人を救いたいとも思わないし、大切な人達が安全なら、寧ろ魔物が一番好きだ。
そんな僕が思うのは、貴重な友情や信頼があっても、一方が出て行くと言えば、すぐにそれを了承できるという事が不思議でならない。
しかし、群れとして説明されれば理解するのは簡単だった。
群れは互いの命に関わるため、どんな綻びだろうと、より大切な群れがあるのなら、その者を追い出す事も仕方ない。
それが自分達の群れを長生きさせる事に繋がるのだ。
そう考えれば、国という小さな群れが集まった大きな群れは、その場所で生きたいという、一番強い意思を持つ者達の群れであるため、犯罪者だろうと出て行かない者達は群れの一部であり、そこで裁くことになる。
これに関しては前世でも同じだが、騎士として国に貢献し、友人であった父様がいなくなるというのは、裏切りと捉えられてもおかしくないのではないかと思うが、群れとして考えた場合は友好的なまま別れ、関係性を悪くしない方が賢明な判断だと、僕も理解できた。
要は、僕個人の考えなのか、それとも群れとしての考えなのかというだけの話なのだが、責任者のような立場になった事のない僕にとっては、考えが及ばない事が殆どだ。
そんな、誰にでも分かりそうな事が理解できない僕にも、ヒバリくんは丁寧に教えてくれるのだ。
ツガイになってからというもの、ヒバリくんへの愛が溢れ続けている僕は、違う事を考えていても最終的にはヒバリくんに行きつく。
そうしているうちにヒバリくんによって運ばれていた僕は、いつも誰かに声をかけられて初めて、自分が今どこにいるのかを知る。
「ユル、精霊門に着いたぞ」
「……精霊門?どうしてまたここにいるの?」
「エルフ達の見送りと、ついでにルーフェンが神獣の子育てについて聞く為に、俺の親を紹介しようと思ってな」
子育てって、僕は子どもじゃないよ。
もう大人だし、ヒバリくんとツガイになった。
それに、僕は父様に不満はないし、わざわざ聞く必要もないと思う。
「ユルは不要だと思うだろうが、私が聞きたくてお願いしたんだ。ついでに、ユハクとノヴァも聞きたいらしい。神獣について聞ければ、ユルに合った魔力の扱い方を教えられるうえに、ユルを理解しやすくもなるだろう?」
「僕も前世のユヅを知ってるだけじゃ足りないからね。兄としていられるように勉強させてもらうつもりだよ」
「私もです。ユル様の側近として、ユル様を理解するのは当然ですから。それに、他の者に側近の座を奪われるわけにはいきません」
三人とも真剣な表情だったため、僕は何も言えずにヒバリくんにお願いした。
ヒバリくんの両親は、植物を身に纏う精霊王で、エルフの方はヒバリくんに似た糸目さんだった。
しかし、不思議とあまり惹かれる事はなく、ノヴァやユハ兄さんの方が格好いいと思いながらも、やはりヒバリくんが一番格好いいと考えていた。
そんな珍しい僕の反応に、ヒバリくんは心配してくれたのか、このまま精霊門で魔物達の元へ行くかと提案してくれる。
暗部隊の新しい家を見てみたいという事もあり、僕はすぐに頷いて連れて行ってもらった。
暗部隊のみんなは突然来たにも関わらず、僕を歓迎してくれて、魔物達も僕に会えた事が嬉しすぎるあまり、姿勢を低くしながら尻尾をブンブン振って集まってくる。
僕の推し魔物であるキツネのような魔物を真似て、他の魔物達も僕に好かれる為にしているのだろう。
そして新しい家の方は、森に隠れやすいよう、エルフ達の家と同じくツリーハウスとなっていた。
人数的に大丈夫なのかと訊いてみたが、どうやらここに来るのは休みを取る為に交代で帰るだけで、殆どは外で情報収集をしているのだという。
そのため、ここには多くても五人ほどしかいないという事もあり、問題なく暮らせているようだ。
みんなが元気なら良かった。
それに、魔物達も元気だしお利口さんだし……でも、この子達と一緒にいたら魔王に監視されて――……ん?待って。
「ヒバリくん、僕がこの子達といたら、魔王は気づいてくれないの?」
「気づかないだろうな。この森に住むと決めた魔物達は、ユルの群れになってる。それは魔王の影響も受けないという事にもなるんだ」
「それだけで?そもそも、どうして魔王は魔物と繋がれるの?」
「今の魔王は魔族ではない。魔物からの進化によって魔王になった、魔物の王のようなものだ。けどまあ、魔族を群れとして国をつくっている以上、魔物との縁も消えつつあるけどな。そのせいで、魔物は凶暴化しやすくなるし、魔物の制御ができないのが現状だ」
えぇー……まさかそんな事になってるとは思わなかった。
でも、という事は魔物は国っていう群れはないんだね。
ダンジョンも、そこが通り道で住処になってるに過ぎないって事でいいのかな。
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