2章 表15

 発動した魔術は2番目の魔術と同じように淡く発光し消える。


「また、不発でしょうか…」


 誰かが零した。コンスルはゆっくりとテーブルの方に近づく。


「くそっ!!」


 コンスルは怒号を上げ、テーブルの上の封筒を振り上げて叩きつけた。


「何なんだ!意味のわからない魔術ばかり!あの親父め!」


 どん!とテーブルを叩き、怒りを爆発させる。仕方ないのかもしれない。どう使うかわからない魔術に発動しても不発に終わる魔術、苛立ちを募らせていたのだろう。


 誰もが声をかけられず、その姿に同情の目を向けていた。


 「コンスル…」


 呟きながらエリックは叩きつけられ、封筒から飛び出した短編の書かれた紙を拾う。


 紙は左上に開けられた穴に麻の紐を通され纏められていた。


(この短編、原本か…)


 原本を借りた時のことを思い出す。


(一纏めにするための紐を通す穴だったか)


 怒るコンスルの側でエリックの頭の中はそんなことに気を取られていた。紙を整え、封筒に戻してコンスルの側に置いた。そして改めてコンスルの顔を見た時、エリックの頭の中で何かが繋がる音がした。


「補助魔術だ…」


 口が勝手に動いていた。奇妙なことに思考は自身の発言を聞いてから巡り始める。


 補助魔術とは古い時代、魔術の効果を高めるため、或いは効果を変質させるために生み出された魔術。故に単体では意味を成さない魔術だ。


「補助魔術…あれらは不発だったのではなかったということですか…」


「なんだ?それは…」


 合点がいった顔をするミークと目尻を吊り上げ問いかけるコンスル。補助魔術についてミークが説明を始める。


「随分と昔にあった魔術です。昔は今ほど魔術が効率化されていなかったので一つの魔術に対して別の魔術師が補助魔術をかけることで効果を高めていたそうです」


 説明を聞いたコンスルの目の色が変わる。


「つまり2番目と3番目の魔術は補助魔術で別の魔術にかけることで効果が発現するはずだ、と。そして別の魔術というのは当然1番目の魔術ということか!」


 皆が顔を見合わせて頷いた。


「コンスル、君は1番目の魔術を行使してくれ。補助魔術の片方は私が担当しよう。もう一つは…」


「私にやらせてください!」


とイヴァンが前に出る。


「では私とミーク殿は発動する魔術をしっかりと見届けましょう」


 3人は魔術書を囲んで魔術の確認をした。それから間隔を空けて3人は並ぶ。


「まずコンスルが。続いて私たちが補助魔術を使う。コンスルが魔法陣を展開したら私が合図するからタイミングを合わせて」


 エリックが魔術書片手にそう言うと2人は大きく頷いた。


「いくぞ」


 掛け声と共に魔法陣を展開するコンスル。エリックが合図を出し、エリックとイヴァンは同時に魔法陣を展開する。


 3人はそれぞれ魔術に集中する。


 3つの魔術は同時に淡く発光し始める。


 そしてついにゴードンが遺した魔術が正体を現したーーーー

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