2章 表11
地面に吸い込まれるように消えた水の玉をエリック達は固唾を飲んで見送った。
庭には枝葉の擦れる音だけが響く。
「美しい魔術でしたな」
と言ったゼオル。
「本当に綺麗だった。素晴らしい魔術だ」
とエリックも同意した。
しかしコンスルは浮かない顔をしていた。どうした?とエリックが声をかける前にコンスルは唐突に笑い出した。
「ふ、あはははは…はぁ…」
突如笑い出したかと思えば大きくため息をついたコンスル。
「大層に遺した魔術。何かと思ってみればこんなものか!結局…あの父のことは最期までわからなかったな…」
諦めたように呟くコンスル。寂しそうに遠い目をする。何か声をかけねばと思うが上手く言葉にならない。少し間があって
「そう言いますな。魔術はあと二つ。その二つがどんな魔術かわかればゴードン殿の意図もわかるやもしれませんぞ」
とゼオルは笑った。
「そうです!きっとこの魔術を遺した意図もわかるはずです!」
「そうだね。残りの二つを解こうか」
コンスルはそう言って笑顔を作った。
「その意気です。さあ次の魔術に取り掛かりましょう」
「次は二番目の魔術ですね」
と言ったイヴァンにエリックはふと思い浮かんだ素朴な疑問を投げかけた。
「そういえば三つの魔術と短編はどうやって対応させたんだ?」
「単純です。魔術書に書かれている順と短編の封筒に入っていた順で対応させました」
なるほど、と呟きながらエリックはノエルとの会話を思い出していた。
(どうやら本当に深い謎は隠されていなさそうだ)
そんなことを考えているとコンスルが次の魔術の実験に取り掛かっていた。円形の魔法陣を展開し、魔術式を書き込んでいく。初めはいつも通りに右回りに書き込んでいき、最後の一重を左回りに書き込む。
「さて、どうなるか?」
魔法陣は淡く発光していく。魔法陣全体が発光し、そして…
あっさりと魔術は発動した。
そこにいる全員が固唾を飲んでこれから起こる何かを待ち構えていた。何かが起きたはずだ、そう思って空、地面、庭の緑に目を凝らす。
しかしそこにあるのは静寂だけだった。
「何が起きたんだ…?」
コンスルが呟く。それと同時に魔法陣は光を失った。
「終わり…?」
誰かが口にした。
「失敗ではなさそうでしたが…」
確かに魔術は発動していた。その証拠に魔術が発動した時の淡い発光が見てとれた。
「不発、でしょうか…?」
その問いに誰も答えられずにいた。
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