2章 表①

 コンスルの屋敷はローレオの街の南西、繁華街や駅からはやや離れている。徒歩で行くには遠く、馬車で向かえばあっと言う間に到着する。そんな距離だ。荷物もそれなりにあるため馬車で向かうことにした。


 コンスルの屋敷に近づいていくと街の雰囲気が少し変わる。この辺りは庭付きの大きな家が並んでいる。さらに建物同士の間隔も広い。いわゆる高級住宅街というものだ。


 建物にはそれぞれの特色が見て取れるが一際目を引くのはコンスルの屋敷だ。石造りで飾り気がない、冷たい印象を与える建物。人が住まなくなったら幽霊屋敷とでも呼ばれそうな雰囲気だ。実際は表の通りから見えない裏手に立派な庭があってそこには別世界かと思うほど暖かい空気に包まれている。


 そのコンスルの屋敷に到着する。表には庭がないため門を潜れば数歩で屋敷の扉にたどり着く。


 扉を叩く。少し間があって扉が開く。出てきたのは細身の若く見えるが一、二本白髪が目立つ男。


「お待ちしておりました、エリック様」


 丁寧に頭を下げた男に対してエリックは


「久しぶりだねニコル。少し老けたか?」


と軽口をたたく。


「やめてくれ。気にしてるんだ」


とニコルは苦笑いを浮かべて。


「悪かった。冗談だ」


 そう謝るエリックに、わかってるよ、と言いながらニコルは荷物を受け取る。


「紹介しておくよ。彼はノエル、私の友人だ。ノエル、彼はニコル。この屋敷に先代のゴードン氏の頃から勤めているベテランだ」


 よろしくお願いします、と2人はお互いに頭を下げる。普段とは違う、よそよそしい2人を見ていると笑いが込み上げてくる。ノエルとニコル、この2人は似ているのかもしれない、そんなことを思いながらエリックは顔に出さないように堪える。


「さ、早く案内してくれ」


 ニコルを急かしてコンスルの元へ案内させた。

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