第32話 岡野大嗣さんの歌とランボー

先日ツイッターですばらしい歌を目にした。


「道ばたで死を待ちながら本物の風に初めて出会う扇風機」


作者は岡野大嗣さん。

解説の必要のない名歌だ。

扇風機が捨てられたのは夏が終わったからであろう。

詩人のランボーは名高い詩集『地獄の季節』のラストで


「もう秋か」


とつぶやいた。

秋の訪れが狂乱の夏の終わり=青春の終わりを意味している。

ランボーはこのとき十七歳だった。

岡野さんの歌はさらに進んで夏の終わりが「死」を暗示している。

その死には風が吹いている。

それを感じるのが扇風機で、さらに「初めて」味わう本物の風というのがたまらない。

若者がよくいう「エモい」というはこういうことかと、老人は感じ入りました。


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