第44話 胸で人は決まらない
時間が経つにつれ層が変わって行く、不思議な街だ。
今は若い人達が随分と増えた様に思える。
「大分歩いたわね」
「疲れちゃった?」
僕の言葉に華が答える。
華は中心街から少しだけ離れた方へと向かい始める。
「ここで休めるけど、そうする?」
華に連れて来られた路地の両側には、ホテルが並んでいた。
「いやいや、ダメでしょう」
キラキラと輝いていた華の瞳から、活力が失せて行く感じがしたのは気のせいか、
まさか本気だったのか?
華は時折読めない時があるので困る。
「早く明るい所に行こう、私そろそろ帰らないと行けないからさ」
「そうだね、今日は誘ってくれてありがとうね、真」
僕達は陽が暮れる前には地元へと戻って来たのだった。
香澄が帰省から戻ってからは宿題に打ち込んだ。
基本は2人で僕の部屋、時には詩音と華も誘い図書館などで熟して行った。
そんなある時、華が息抜きに渋谷での事を話し始めた。
「ええ、徳之助に会ったの?」
「連絡先の交換して欲しいって言われたから応じたんだけど、真、真って真の事とばっかりの内容で、全然面白く無いんだよね」
「真、一目惚れされちゃったんじゃない?」
「詩音まで止めてよ」
交換を断っといて良かったとつくづく思った瞬間である。
「後ね、真をホテルに誘ったのだけど、見事に断られちゃった」
「ホテル!!」
「ホテルですって」
慌てる香澄と詩音に僕は言ってやった。
「普通に断るでしょう、女同士なんだし子供が入っては行けない所よ」
「ええー、詩音なら入ってくれたよね?」
「入りません」
華の言葉に詩音もきっぱりと断った。
なるほどな、華は七海と似た様な感じの人種なのだ、偏見なのだろうが
中学生位の女子は同性に憧れる傾向があるのかなと思えて来た。
翌日は家に香澄が宿題を持って来た。
暫くすると自然に渋谷での話と成って行った。
「徳之助に正体は気付かれなかったのね」
「ああ、大体僕の顔より胸の方を見てたからな」
「うわー、気持ち悪」
うんうん、僕も気持ち悪かった、多少チラチラと成れば分からなくも無い気がするけどな。
「真って見ないわよね」
「そんな事は無いよ、最近香澄は育ったんだな、それともパットを増やしたのかなとか?」
「ななな・・・・何で知ってるのよ、真のバカ」
香澄は慌てて両手で胸を隠した。
「パットの数は増やしてないから、ちゃんと成長してるのだからね」
「分かった、分かった」
僕は顔を真赤にしてる香澄をなだめる。
「以前ブラを忘れて行った時に見えちゃってね」
「何も見て無いと言ったくせに、大体さ真の胸がもっと小さければ苦労しないのよ」
何故僕と比較するのだ、人それぞれ個性があって当たり前、気にする事では無いと思うのだがな。
僕は最後の文字をノートに書き込んで両手を上げた。
「終わったー」
「私も後少しで終わるわ」
これでスムーズに2学期へと入って行けるだろう。
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