第36話 七海VS香澄

僕は海から上がった後、七海と目を合わせる事が無かった、と言うより敢えて避けたのであった。


「ごめんね、私先に戻ってる」


「調子でも悪いの?」


僕の言葉に心配してくれる香澄、詩音と華も心配そうに見つめてくれる。


「少し疲れちゃったみたいなんだ」


そう言い残し別荘へと戻った。



建物に入りリビングまで行くと、オープンキッチンで調理をしてる、里見さんが視界に入って来た。


「ただいま戻りました」


「お帰りなさい、真さん1人ですか?」


「はい、少しはしゃぎすぎてしまった様で、疲れたので戻って来ました」


「そうですか、何時でもお風呂に入れますのでゆっくり疲れを取って下さい」


僕は好意を素直に受け取る事にした、完全に忘れていたが不幸中の幸いだったかも知れない。


部屋に戻ると着替えとタオルを持って案内された風呂へと向かった。

裸に成り浴室へ入って驚いてしまう。

広い、とにかく広い、一家族4人位入れてしまうのでは無いかと思える位の広さだ。

しかも稼働中は24時間、お湯が巡回して綺麗な状態を保つタイプの風呂だ。

温度も温めに設定されてて気持ち良い。


「海で遊ぶより全然良いな」


僕は勝手に呟き頷いていた。


しかし、あの3人が何時帰ってくるか分からない以上、名残惜しいがさっさと出なければ成らない。


そんな事を考えている時、海辺ではちょっとした問題が起こっていた。



七海が香澄に声を掛けたのである。


「あら、真ちゃんは戻ってしまったの?」


「遊びすぎて疲れてしまったのでは無いですかね?」


無愛想に答える香澄。


「私ね、一度香澄さんともお話をしてみたかったのよ、少し一緒に歩かない?」


そう言うと七海は立ち上がった。


「圭子、少し散歩してくるね」


「はーい」


香澄も立ち上がり笑顔で詩音と華に手を振ると、七海の後に付いて行った。


波打ち際まで来ると七海が口を開く。


「香澄さんは、真ちゃんの幼馴染なのでしょう」


「はい」


「でも、それだけじゃ無いよね?」


「どう言う意味ですか?」


大分陽が傾いた波打ち際を歩く2人。

端から見ればとても美しく写っているが、話してる内容は全く逆の物であった。


「幼馴染以上の感情を持ってるわよね」


香澄は一瞬戸惑った。


「七海会長は何を言ってるんですか、私と真はただの幼馴染なんですよ?」


「そう、それなら真ちゃんを貰っても構わないわよね」


「七海会長は女性でしょう、それに駆流にアタックしてるって噂で聞きましたよ」


「えーとね、私は真ちゃんと付き合いたいとか、そう言う事を言ってるのでは無いの、純粋にね側に置いて愛でたいのよ」


「・・・・」


「駆流君とは恋愛に成るけど、真ちゃんとは違うのよね」


「可怪しいですよ、翔琉とだけイチャイチャしてれば良いのでは無いですか?」


香澄は七海の口から出てくる理論に頭が追い付かなく成って来ていた。


「貴方って彼氏はいるの?」


「いますけど?」


「いるのに恋しちゃってるんだ」


「恋なんてしてませんって言ってますよね」


「可怪しいな、貴方の視線や態度みてると、そう感じるのだけど本人が言うのなら、そう言う事にしときましょう」


香澄の表情からは、明らかに敵意と動揺が出されていた。


「彼氏もいて、ただの幼馴染なら貴方には遠慮いらないみたいね、後は真ちゃんの気持ち次第なんだから」


七海は波打ち際を離れ始めた。


「私は遠慮しないから」


香澄は七海の言葉に悪意を感じると共に不安に成ったのである。

何故なら、何を取っても自分で勝る所が無いからである。






































































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