第33話 伊豆へGO

僕と香澄は始発に近い時間に駅前へと着いた。


「2人はまだ来て無いみたいだね」


香澄は返事の代わりに欠伸をした。


「そう言えば、詩音の事ありがとう」


「特に大した事はしてないわ、聞いた話として軽く伝え、無視して遊びましょうと言っただけ」


こう言う所が香澄の羨ましい所なんだよな。


丁度交差点の向こうに詩音と華の姿が見えて来たのである。


「お待たせ」


「ごめんね、嬉しすぎて上手く寝れなくてさ、詩音の約束に遅れちゃって」


華はまるで子供みたいだ。



4人は切符を買い電車に乗り込む。


「伊豆楽しみだな」


そう言いながら香澄は菓子の袋を開けると、膝の上に置いた。


「皆で食べよう」


「実は私も持って来ました」


詩音も鞄から菓子を出して来た。


皆、乗り気でまずは一安心だな。


「華、熱海で乗り換えだけど、凄く時間があるから寝てても良いよ」


「うん、寝れそうならそうする」


それから数分で寝落ちしたのは想像が付くだろう。



「詩音の別荘は何処にあるの?」


香澄が興味津々で聞き出そうと試みる。


「鍋田浜海水浴場と言って、観光客は比較的少なく地元の方々の方が多いかな?」


混雑してないのは、僕にとって有り難い話だ。


「香澄も寝てて良いよ」


「う、うん・・・・ZZZ」


はやっ


暇に成った僕は鞄から高1の問題集を取り出し、挑み始めたのである。

詩音も何か読書を始めていた。


約90分後、僕達は終点下田に到着し駅前まで出て来たのである。

そこには何と、日傘をさし暑苦しそうなメイド服を着た一人の女性が立っている。


この夏に大変そうだな、うちの家でもあんな感じなのだろうか?

と言うか、もしかしたら七海のお迎えか?


詩音がその女性へ体を向けると一礼した。


「里美さん、お久しぶりです」


「ごぶさたしてます、詩音様」


うわ、こっちの関係者だった。


「所で何故メイド服など着てるのですか?」


「社長からお世話係を頼まれた時、考え抜いて形も大事だと思いましたので」


僕達は詩音から里美さんを紹介された。

滞在してる間の世話をしてくれる人で、普段は秘書の1人だそうだ。


「お車で来ましたので、荷物をお運びしますね」


「ありがとうございます、里美さんでしたっけ?」


「はい」


「私達はかしこまった対応に慣れてませんので、もっとフレンドリーに出来ませんかね、せっかくの旅行なんですし」


「そうね、里美さんはこれから私を始め全員を妹だとでも思って接して下さいね」


僕の言いたい事を詩音は直ぐに理解してくれた様で助かった、妹と言うのはどうだかと思うがな。


「かしこまり・・・・いえ、わかったわ」


かなり無理してる笑顔だが、どうせなら彼女にも楽しんでもらいたい。

でも無理なんだろうな、10年以上一緒な初江さんでさえ出来無いのだから


車に便乗した僕達は、詩音の別荘に向かい始めたのであった。






















































































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