第30話 七海の思惑

七海は手に持ったカップを置くと、一拍置いて言った。


「そっかー、それなら偶然に会うしか無いね」


この人は何を言ってるのだ?


「一色詩音さん、お友達でしょう?」


「はい」


「あの娘の家の別荘区画って、うちの管理してる所なのよ」


「・・・・」


わざわざ調べたのか?

まるでストーカーの様だな、不動産会社の元締めなら簡単な事なのか?


「それを何故伝えてくるのですか、意味が分かりませんよ」


「駆流君が一緒に参加するからよ、本当は日程をずらして上げたかったのだけどね、どうしても真ちゃんの日程が合わないみたいだから、仕方が無いわよね」


この人は何と言うか、手段を選ば無い人なんだな。


「当然、現地では合流して一緒に遊んでくれるわよね?」


「もちろんですよ」


まるで脅迫みたいな質問に、僕は作り笑いで答えた。


「良かったわ、何か盛大な事をやりたいわね」


渋々と2日目の夜にBBQする事を教えたのだった。


「話はこれで終わりですか?」


「待って、LINEの交換しましょう、今後きっと役に立つからね」


僕はスマホを取り出すと七海とアドレスの交換をした。


「これから2人だけの時はお姉さんとか、お姉様とか呼んで欲しいかな」


「そんなの無理ですよ」


「どうして?」


「どうしてって実際に姉妹じゃないですし、どう考えても変ですよ」


やばい、頭が混乱して来る。

この人は何が目的なんだ、秘密がバレてて駆流がダメなら僕とか?

いやいや、我が家はそんな簡単に分かる細工じゃないはずだ。

慎重に考えて答えなければ自滅する可能性がある。


「そ、そう言えば七海さんには翔琉がいるじゃないですか」


「駆流君は良いわよね、家柄も頭脳も優秀で文句無い子だと思うわ」


「それなら、私が七海さんに近づいたりしたら嫉妬されてしまいますよ」


「あら、そろそろ皆戻ってくる時間だわ、話の続きはまた今度しましょう」


「分かりました、紅茶ごちそうさまでした」


僕は立ち上がり生徒会室の扉に向かう。


「私って凄く我儘なみたいなの、欲しいと思ったら何でもしちゃうからね」


僕は扉を開け失礼しますと頭を下げる。


「またね、真ちゃん」


七海は満面の笑顔で手を振っていた。


僕は秘密が知られると困るからだけど、七海の人気なら仮の妹位簡単に作れそうだが、何か拘りでもあるのかな?

これ以上固執されるのも困るのだけどな。



僕は部屋で悩んでいた、最近の色々を初江さんに相談するべきか否か。


「ここで相談しても、曖昧な難しい答えしか帰って来ないんだよな」


最近の経験を思い出しながら独りつぶやいたのだった、父上の言いつけだと想像してるが、人間関係に対しては最小限のアドバイスしか貰えない。

何でも熟してくれる初江さんがだ。


大体、全てを明らかにして隠し事を無くしてしまえば全て片付くのだ。


これは困った時に何時も考えてしまう、僕の無意識な癖である。


また危うい事を考えてしまった、まずは詩音が楽しめる様にする事が先だ。

一つ一つ片付けて行けば良いだけの話。


僕は無理やり頭の中を切り替えたのであった。
















































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