第29話 生徒会室にお呼ばれ
終業式前日、僕の下駄箱には何通かの封筒が入っていた。
どうせ夏休み遊びに行こうと言う内容なのだろう、全ての封筒の裏側を見ると1通以外名前の記載がない。
僕は名無しの封筒は開けない様にしてるが、名前の記載があれば早めに開けている、大切な要件かも知れないからだ。
今回は『七海』と書かれていた。
七海からか、少し不安だが教室に入り席に着くとヒッソリ読んだ。
内容は明日、終業式後に生徒会室で待っているだった。
「はぁぁ」
僕は無意識に小さな溜息が出ていた、予想だが内容は他の封筒に入ってる手紙と変わら無いと思ったからである。
翌日の終業式は無事に終わり、生徒会役員を初め委員達が講堂の片付けを初めた。
「真、早く帰ろう」
「ごめん、生徒会に呼ばれてるから3人で先に帰ってくれるかな」
教室を出て行った3人とは別の方向へと足を向けたのである。
生徒会室の扉をノックすると、中から七海が扉を開けてくれた。
「来てくれて嬉しいわ、入って入って」
僕は腕を引っ張られ、嬉しそうに喜んでる七海に背中を押された。
「そちらのソファーにどうぞ、直ぐに美味しい紅茶を入れますからね」
「ありがとうございます」
七海はカップを2つ用意すると手慣れた手捌きで作業をこなして行く。
「質問ですが、七海さんは講堂の監視とか指示とかしないで平気なんですか?」
「副会長の圭子がいますし、2・3年の委員は慣れてますからね」
それもそうか、会長にしか出来ない仕事も有るのだから、臨機応変にってやつなのかな。
僕の前に紅茶の入ったカップが置かれると、七海は正面に腰をおろした。
「いただきます」
一口含んだ感じ確かに美味しい、しかし初江さんの方が美味しいな。
きっと茶葉の差なのだろう。
「美味しいです」
「良かった、本当はもっと良い茶葉を使いたいのだけど、予算の関係で反対され怒られちゃってね」
七海が初めて恥ずかしそうに照れる姿を見た、案外付き合ってみると人間味ある人なのかもしれ無い。
「七海さんでも怒られる事あるんですね」
「真ちゃんは、私を何だと思ってたのかな?
まだまだ何も分かって無い中学3年生だよ」
「いえいえ、私には完璧な方と言うイメージしか無かった物ですから」
「こんなお姉ちゃん欲しかった憧れとかある?」
瞳をきらめかせ少し前のめりで聞いて来た。
「得には無いですね」
「はぁ傷つくな、今日も真ちゃんはクールなのね」
クールでは無い、用心である。
「それで、私は何の為に呼ばれたのでしょうか?」
「本題は夏休みの旅行についてなのだけど、空いてる日を教えてくれないかな?」
「何故参加が決定されてるのですか?」
「ええー、ダメだった?」
「ダメですね」
僕ははっきりと断った。
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