第27話 詩音との一夜

香澄の使っていたシャワーの音が止まる。


「先に出る」


「うん」


どうしたのかな、何か少し変な感じだったけど普段と違う洗具に、違和感でも感じたのか?

女子は拘りを持ってるみたいだしな。


香澄は寝間着に着替えながら、同じ浴槽で手の一つも握られなかった事を悔しく思っていたのである。



僕が部屋に戻ると3人はダラダラとした姿勢で旅行の話をしいていた。



数時間後、深夜に成って来た所で皆欠伸の回数が増えて来る。


「そろそろ寝ましょうか」


詩音の言葉に僕達は頷き、家政婦さんが用意してくれた客間に向かおうと起き上がった。


「客間のベッドは2つだから、誰か私と一緒に寝ましょう」


「私が」


「華はダメ、真一緒に寝ましょう」


華が口を開いたとたん却下された。


「私が?」


「ダメですか、お風呂も断られ香澄と入ったし、もしかして私嫌われてるのかな」


「そんな事は無いよ、今夜は一緒に寝よう」


これでは香澄からのフォローも期待出来ないだろう。


2人が部屋を出て行った所で詩音が嬉しそうに、自分のベッドへ手招きして来た。


仕方無く、僕は詩音のベッドに誘われるがまま潜り込んだのだった。


「真はまだ少し起きてられますよね、私と少し話をしませんか?」


悩みの相談だろうか?


「うん、良いよ」


詩音は華と風呂に入った時の事を話始めた。


「凄く丁寧に髪を洗ってくれたので、背中もお任せしたんですよ」


そう言うと詩音は僕の方をに体を向け、僕の腕を胸の間に挟み込んだ。


「ちょっと詩音?」


「ね、驚くでしょう」


華がやったのか・・・・全く


それから詩音は僕の腰のラインを下から上へとなぞり、胸を触り始めた。


「詩音、これは流石に怒るよ」


「ごめんなさい、でも部屋に戻った時に私が怒ってたの分かったでしょう」


「う、うん、怒って当たり前だね、凄く恥ずかしいもんね」


今は僕も女子で友達同士なのだから、これ以上怒っても仕方が無いだろうと思う。


「真と香澄はどうだったの?」


「うーん、お互い体も殆ど見なかったかな」


「そうなんだ、幼馴染だからお互いに洗い合ったりするのかと思ってたわ」


「幼馴染だからって、そこまでは無いよ」


「私だったら隅々まで綺麗にして上げるのにな」


詩音は布団を少し被り嬉しそうに微笑んだ。


「真、こっち見て」


僕は詩音が言うまま彼女の方へ顔を向ける。


「ん・・・。うんんん」


詩音の間近にある瞳が妖しく感じる。


甘い味・・・・これは何なんだ


「ぷはぁ」


僕は半ば力付くで詩音を引き離した。


「真の初めてを貰っちゃったかな、私も初めてのキスだったんだけどね」


「今のがキス?」


キスと言うのは、唇を重ねるだけの物なのでは無いのか?


「真って中1の割には無垢よね、今のは大人のキスよ。

私と真、互いのファーストキスが大人のキスって素敵よね」


そうか、僕は詩音とファーストキスをしてしまったのか、怒りより驚きの方が大きい、不思議な甘い味だった。

いやいや、こんなのダメだろう。


「詩音」


「分かってる、2人だけの秘密ね。

でも、私の心を少し埋めてくれて嬉しかったかな、ありがとう」


「人に言ったり、同じ事したりしたら絶交するからね」


もちろんそんな気は無い、何故なら駆流のせいで酷く傷付いていたのも知っているからだ、それが僕のせいである事も。


「はーい、それじゃねましょうか」


「うん」


僕は念の為、詩音が寝付くのを待った、彼女は僕の腕にしがみ付く様にして寝息を立て始める。

無意識だし仕方が無いか、でもこんなに早くファーストキスを経験してしまうとはな。


真は知らないだけで有って既に経験済みで有ったのである・・・・相手はお分かりだろう。

































































































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