第26話 香澄との入浴

普段詩音の家では家政婦が食事を作ってくれるそうなのだが、今夜は詩音の母自ら手料理を振る舞ってくれた。

それはそれは、とても美味しい物だった。

僕達はデザートまでご馳走に成って詩音の部屋へと戻ったのである。



詩音の部屋ではご馳走の話で盛り上がっていた。


コンコン。


「詩音様、お風呂の準備が出来ましたので、2名づつお入り下さいませ」


「ありがとう、母から先にどうぞと申し上げて下さい」


「奥様から先に入られる様に言い伝わっておりますので、お先にお願いします」


「分かりました」


詩音も家では随分と態度が違うんだな、完全なお嬢様である。


「それでは真、私と一緒に入りましょうか」


来た、家政婦の2名づつと言う言葉を聞いて直ぐに不安を感じたのである。

今までの人生で最大のピンチを迎えようとしてる。


「私は後で良いわ」


「それなら私が詩音と一緒に入るー」


華が詩音の腕にしがみついた。


「そ、そうですね華行きましょうか」


詩音は渋々と、華を連れ寝間着を持って部屋を出ていった。


「ふぅぅ、困ったな」


思わず頭で整理するつもりが、余りの動揺で言葉に出てしまった。


「真、私と一緒に入りましょう」


「え、それは不味いのでは無いか?」


「私が良いと言ってるのだから構わないわ、その代わりお互いの体は見ない様に、少しでも見たら殴るからね」


「分かった、ありがとうね香澄」


香澄は頬を真っ赤にしながらも、勇気を出して提案したのだった。


助かった、残ってくれたのが香澄で良かった。

今回は彼女の好意に甘えさせて貰おう。



1時間近くして2人が戻って来ると、詩音が華に怒り始めた。


「全く、華ったら信じられないわ」


「ごめんごめん、詩音の肌がとても綺麗だったし腰のクビレやお尻の形、そして胸・・・・」


「口に出さないでよ、恥ずかしいじゃない」


詩音が慌てて華の口を塞いだ。


華が詩音に何かしたのだろう恐ろしい娘だ。

僕も気を付けねば危ないだろう。


「真と香澄もどうぞ?」


「うん」


僕は意を決し立ち上がって部屋を出ると、香澄も黙って付いて来た。



脱衣所では香澄が視界に入らない様にしながら服を脱ぎ始める。


「香澄が先に入って汗を流してよ、そして湯船に浸かったら教えてくれるかな」


「うん」


僕より簡単に裸へと成れる香澄は浴室へと入って行った。

シャワーの音が聞こえる中、綺麗にたたんだ衣服の中に下着類を隠した。


「入って良いわよ」


香澄の了解が出たので僕は浴室の扉を開けると、彼女は背中を向けて湯に浸かっている。


「先に洗わせて貰うね」


僕は肩まである髪を手櫛で整えると髪を洗い始めた。

人と入る風呂と言うのはここまで緊張する物なのか、心臓が飛び出そうだ。


トリートメントまで終えると手早く体を洗い終えた。


「洗終えたから先に出るよ」


「真も浸かりなさいよ」


「でも」


「私が良いって言ってるの」


香澄がスペースを開けてくれたので、僕は背中合わせに成る感じで湯船の中へと入り込んだ。


「気持ち良い、本当に広い風呂なんだな」


お互い背中を預ける感じで浸かっている。


「小さい頃依頼だね」


「そうだな、中学に成ってまで一緒に風呂へ入るなんて、考えてもいなかったよ」


「恥ずかしい事言わないでよ、でもさ真って強いよね」


「ん?」


「何か特別な事情を抱えてるにも関わらず、人に優しく出来るなんてさ」


そう言い終えると香澄は浴槽を出て洗い始めた、当然背中を向けたので何処からかは分からない。


僕が強いか、それは違うんだよ

香澄は大きな誤解をしてるかも知れない。








































































































  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る