第22話 香澄の恋心

清々しい春風の中に赤レンガの建物が見えて来る。


「次のハンマーヘッドで降りるからね」


「うん」


香澄は行く気満々だな。


僕達はシーバスを降りると散歩道をノンビリと歩きながら、アトラクションのあるエリアへと向かって行った。


「メリーゴーランドとコースターは外せないよね」


「そうだね」


「最後は観覧車で横浜の夜景をみようよ」


昨日の詩音と一緒だ


「何だか真は楽しくなさそうに見えるんだけど?」


「そんな事無いよ、香澄の朝が早かったから少し眠気がね・・・・あははは」


「楽しめてるなら良いや、来れて良かった」


昨日と同じアトラクションを楽しんだ後、夕暮れ時に観覧車へと乗り込んだ。


香澄は僕の横に座り腕を組んで来る。


こう言う所は積極的なんだよな。


「真」


「どうしたの?」


「真は女の娘として生活してるでしょう、何か理由があるのは中学生にも成れば分かるわ」


「・・・・」


「でもね、私にはそんなの関係無いのよ、大事なのは私達が異性同士って事だと最近は思えて来てね」


「それで?」


「皆には内緒で私と付き合ってくれないかな?」


「僕は香澄の事は好きだよ、でも事情で今はまだ決断出来る状態じゃないんだ。

でも僕が一番大切に思ってるのは香澄の事だから、それは分かってて欲しいな」


「そっか、時が来てお互いが付き合っても良いと思ってたら教えてくれるんだね」


「もちろんさ、今はお互い大切な親友で良いかな?」


「うん、でも忘れ無い為にね」


香澄は僕の頬にキスすると腕を組み、更に寄り添って来た。

工業地帯で輝くオレンジの明かりが、特別に眩しく見えた瞬間であったが。


香澄、嘘を付いてごめん



2日間のテスト休みも終わり香澄と一緒に教室へと入った。


「真ちゃん、おはようございます」


「おはようございます、生徒会長」


「七海で良いわよ、生徒会長なんて堅苦しいでしょう」


「それでは七海さん、朝早くから1年の教室にどうしたのですか?」


「駆流君を昼食に誘いに来たのよ、噂では婚約も破棄されたと聞いたしね」


詩音が登校前で良かった。


「七海さんって、駆流みたいなのがタイプだったのですね」


僕からしてみれば有り難い話だと思う


「冗談よ冗談、昼食取りながら生徒会の親睦を深めますよって話よ」


そうか、翔琉は生徒会でハーレム状態なんだな。

超絶美少女な秋山七海、秋山・・・・秋山・・・・って不動産業で有名な秋山建設なのか?

いやいや、僕にはどうでも良い話だ。


「駆流君またお昼にね、真ちゃんもごきげんよう」


七海はクラス中の視線を集めながら、優雅な足取りで教室を後にした。


「駆流って気に入られてるみたいね」


「そうかな、七海会長は綺麗で上品だから嬉しいかも」


数日前には恥ずかしい事を僕に言ってたくせに笑える。

実際は僕も気が楽に成って助かるけどね。

























































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