第20話 詩音の恋心

詩音を店から連れ出すと同時に訪ねた。


「詩音は何がしたい?」


「真に任せるわ」


「まずは元町に行こう、お腹が空いたら中華街でどう?」


「良いわね」



横浜元町、市内では人気の有る商店街である。


2人は順にウインドウショッピングを楽み、商店街の外れまで来た所で気に入った物を買いに戻る。


詩音は鞄を僕はキーケースを買って中華街へと足を向けた。



横浜中華街、言わずと知れた横浜の観光名所である。


今日は平日と言う事もありさほど多くの人では無く、2人並んで歩くのも余裕だった。

詩音が点心を食べたいと言うので、1本裏に入った小さくて目立たない店へと案内した。

僕の後を遠慮がちに入ってくる詩音。

店の奥から年老いた婦人が水を運んで食る。


「点心セット2つと海鮮粥2つお願いします」


「はいよ」


「真はこのお店に良く来るの?」


「最近は久しく来れなかったけど、小さい頃は毎週来てたかな」


「真って色々詳しいよね」


「そんな事は無いよ」


話し込んでると点心セットがテーブルに置かれ、続いて海鮮粥が運ばれて来た。


「熱いから気をつけてね」


「うん」


詩音は長い髪をゴムで縛り箸を手に取る。


お姫様カットのポニーテールも可愛くて良いもんだ、などと考えていたら舌を火傷してしまった。

詩音は満足そうに最後まで残さずに食べてくれたので安心出来た。


「ごちそうさま、ここの分は私が払うわ」


「今日は詩音の為の日だから気にしないで良いよ」


「ありがとう、まるでデートみたいね」


そう言うと詩音はクスクスと微笑んだのだった。



中華街を後にすると港みらいへとやって来た。


確かにこれはデートと言えなくもない、しかし見た目は同性何だから決してデートでは無いと僕は思おう。


「今日はここで遊んで終わりにしよう」


「うん」


これで本当に詩音は少しでも癒やされたのだろうか、そうであるなら嬉しいのだが。


様々なアトラクションを楽しみ夕暮れ時に詩音が観覧車を選んだ。

扉が閉められ2人だけの密室と成る。


「今日は本当にありがとう」


「どういたしまして」


「暫く男子の事は考えたく無いわ」


「詩音は綺麗なんだし、時が来れば自然と良い人に巡り会えるよ」


彼女が横に座り、僕の右手を自分の左胸に強く当てた。


「な、な、何を?」


「分かる?」


「え?」


凄い柔らかさと大きさしか分からないんだが?


「駆流さんと一緒の時でも、ここまで鼓動が激しく成った事は無かった」


「詩音は、雰囲気に流されてるんじゃないかな?」


「それでも構わない、心に空いた穴を埋めてくれる人が出て来るまで、真で埋めさせて欲しいの良いよね?」


振られたばかりの彼女を無下にも出来ないし、どうした物か。


「やっぱり私何かではダメかな」


「私は香澄と華を親友だと思ってるのだけど、詩音も親友でなら嬉しく歓迎するよ」


これでもギリギリのラインなんだよな、リスクが増える事に成るからだ。


「ありがとう」


詩音は僕の頬にキスをして腕を組んで、顔を埋める。


この娘は本当に分かっているのだろうか、更に状況が悪化してしまったのだが収集付くのか不安で仕方無い。



































































































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