第19話 テスト休み 1日目

週末を挟み全教科の答案用紙が帰って来た。

僕は自分の成績より華の成績が心配で後ろから覗き込んだ。


「華、赤点はなさそうだね」


「うん、真のお陰だよありがとうね」


華は振り向きざまに赤点ギリギリのテストを持ちニコニコしていた。


「期末は手伝わないから頑張ってね」


僕もニコニコと答える。


香澄が僕の元までやって来て、張り出された成績表を見に行こうと腕を掴む。


「私は遠慮しとく」


「そうだよね、どうせ1位なんだから見ても見なくても一緒か、今回私は100番に入っていそうだから見てくる」


「待って香澄、私も行く」


香澄と華は職員室前の廊下まで出かけて行ってしまった。


「全く真には敵わないな」


「駆流だって成績悪く無いと思ったけど?」


「ああ、悪くはないがトップでは無い、全てを真より上回らないと話にも成らないだろう」


この男は未だに諦めてないのかよ。


「許嫁さんは良いの?」


「詩音はもう許嫁じゃないんだ」


「え?」


「昨日じっくり話し合い、お互いの家も納得したよ」


随分と思い切った事をしたもんだな。

しかし、弟欲しさに婚約を破棄するなんて、その内駆流にも良い人が出来るだろうから、適当に合わせとくのが得策か、飽くまでも詩音寄りじゃないと不味いからな。

どうか、父上には知られません様にと願う。


「そう、言っとくけど私は詩音のケアをするわよ」


「頼むよ、詩音を元気に戻してやってくれ」


駆流は決していけ好かないボンボンな訳では無いのか、本音かどうかは分からない所だけど、他人を思う心は持ち合わせてる様だ。



いよいよテスト休み、1日目は詩音との約束で駅前の喫茶店で待っていた。


「お待たせしちゃってごめんね」


テーブルから顔を上げると、春色のワンピースに麦わら帽子を被ったお嬢様が立っていた。


「大丈夫、今来た所よ」


「ふふふ・・・・まるで恋人同士の待ち合わせみたいね」


そう言いながら詩音は席に着くとブレンドを頼んだ。


「それは私の格好が男子っぽいって事かな?」


詩音は笑顔を見せているが、その合間に見せる悲しげな瞳の方が気に成った。


「それで詩音の話って何かな?」


「うん、本当は駆流さんをキッパリと振って欲しいとお願いしたかったのですが」


「が?」


「駆流さんとの婚約が破棄されてしまいました」


「昨日、彼から聞いたよ」


「・・・・」


「一応言っとくけど私は詩音の方に付くと伝えたわ、でも彼に何かをするつもりは無いからね」


復讐にでも付き合わされたら、たまった物では無い。


「ありがとう」


「この噂が広がれば詩音の周りは男子で一杯に成るのね」


「それも困るわ、真って可愛いのに男子って余り寄って来ないわよね」


「彼氏を作らない宣言が広まってるからかな」


これは事実なのである


「買い物でもして、気分変える?」


「良いの?」


「もちろん、今日の私は詩音の貸し切りだから愚痴も聞くし、何にでも付き合うよ」


これで少しでも詩音の気持ちが晴れてくれるなら嬉しいものだ。


























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