第17話 真って可愛いんだから

本日から放課後の居残り勉強の始まりである。

翔琉が詩音と帰ったので華が隣に移動して来た。


「数学って良く分からないんだよね」


「難しいよね、まずは方程式から覚えて行きましょう」


僕は出来るだけ華のモチベーションを高く持たせるために務める。

丁寧に丁寧に噛み砕いて教えて行く。


「これをここに代入すれば良いのかな?」


「華凄いよ、もう一つ覚えたじゃない。

今のを忘れないでね、テストでは応用して出て来るかも知れないからさ」


「ふーう、数学は疲れる」


「少し休憩しようか」


この休憩時間が問題だ、やる気を持たせたまま再開しなければ終わる。


「真って可愛いから結構男子から告白とかされるんじゃない?」


来た来た、これが女子会のノリってのだろう


「うーん、下駄箱には偶に封筒が入ってるけど、開けて見た事無いかな」


「何で!」


「私は男子って余り好きじゃないのよね」


「ほほう、それは私と気が合いますね。

私も男子とイチャイチャする位なら女子と一緒が良いんだよね、特に真とかさ」


何だか話がおかしな方向へ進みだしたじゃないか。


「華の言ってる事ともちょっと違うかな、もちろん華が好意を持ってくれるのは凄く嬉しいよ」


「そっか、こう言うのじゃ無いのか」


そう言うと僕の耳に息を吹き掛けて来た。


「ひゃっ」


思わず変な声が出てしまった。


「ははは・・・・真ったら可愛いんだから」


「もう休憩は終わりにして始めるわよ」


「はいはい」


2人だけの教室で日が暮れるまで勉強に勤しんだ。


「お疲れ様、今日はここまでしましょう」


「疲れた、明日からも続くんだよね」


僕は華にニコリと笑顔で答えた。


「もうさ、3人で補習と追試受けようよ、それなら遊びに行くのと変わらなく無い?」


「そう言う訳には行かないでしょう、もし華が頑張ってくれるなら、明日のお弁当作って来て上げようかなぁ」


「本当に? 私明日も頑張るから愛情を一杯入れて作ってね」


急に元気を取り戻した華と僕は教室を後にしたのだった。



家に帰ると初江さんに細かい説明はせず、大切な人に上げるので明日からの弁当を2個用意してと頼んだ。


テストが近いし、初江さんも大体予想は付いてるだろう。

しかし、僕だって復習しなければ成らないのだからしょうが無いだろう。

人の成績を上げて自分が落としたのでは格好付かないじゃないか

そう心で言い聞かせると机に向かって取り組み始めたのだった。



朝、初江さんから2個の弁当を受け取った。


「青い巾着が真さんので赤い巾着が差し上げる方のです、くれぐれも間違わない様にお願いしますね」


「はーい」


赤い巾着の方が明らかに重いけど、気を利かせてくれたんだな。


「いってきまーす」


今日は香澄より早く家を出たので、門の所でスマホを見ながら待つ事5分


「遅く成ってごめんね」


「丁度来た所だから大丈夫だよ」


「華の調子はどう?」


「今のまま集中してくれれば、行けるかも知れないと思うよ」


「流石だね」


香澄が嬉しそうに腕を組んでくる。


「ちょっとそれはまずいんじゃないか?」


「女子なんてこんな物よ」


そう言うものなのか、それでも耳に息を吹き掛けるのは違うよな・・・・きっと
















































































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