第13話 香澄の護衛

当然の様に朝食を共にする香澄。


「今日は早くからどうしたの?」


「実は真にお願いがあるのよ」


「面倒な事じゃないと良いんだけどな」


香澄の話では以前から言い寄って来る男子がいて、中学への進学で別々に成ったそうなんだが、最近再び言い寄って来ると言う話である。


幼馴染ながら初耳であった。


「名前は原田徳之助(はらだとくのすけ)と言うの、片っ端から女子に声を掛けては付き合って直ぐに別れる様な奴なのよね」


「へえー、モテるんだね」


「確かにイケメンで金持ちでは有るわね」


「それで僕は何をすれば良いのかな、無視は出来ないの?」


「これから会う約束してるから一緒に来て欲しいんだけど、お願い出来るかな」


「真さん、たまには男子として出掛けてはいかがですか?」


話を聞いていた初江さんが意外な提案をして来た、香澄に甘い人だよな


「うーん、香澄の彼氏役でもしようか」


僕は初江さんの提案に乗る事にした。


「いいの!」


手に持っていたパンを落とし身を乗り出して来る香澄。


「近い近い、ただのフリだから分かってるよね」


香澄は笑顔で大きく2回頷いた。



僕は部屋で男性用のウィッグを被り、テープで目を少し吊り上げた。

私服は常に初江さんが流行りの物を用意していてくれてるので困る事が無い。

簡素なアクセサリーを付けたら完成である。

正しく今時って感じのセンスだな


「20分か結構かかってしまった」


独り言を呟きながら階段を降りて行くと、下で待機してた香澄が瞬きも忘れ僕を見上げていた。


「似合わないかな?」


「とっても似合ってますよ真さん」


「うんうん、とても格好良い徳之助なんて問題外だわ」


僕達は家を出ると、待ち合わせしてると言う喫茶店へと向かうのだった。


「僕の役割はあるの?」


「二度と近づいて来ない様に脅かして欲しい」


「了解」



店に入ると数組の客がいる、その中で特別目立った奴がテーブル席に陣取っている。

お互い目が合った時に理解出来た


「奴で間違い無いか?」


「うん」


香澄が小声で答える。


「香澄はカウンターで待ってな」


そう言い残し僕は彼のテーブルに腰を下ろした。


「相席を許可した覚えは無いけど、どちら様かな?」


「俺は三宅香澄の男、彼氏って者だけど要件は分かるよな?」


「香澄さんは付き合ってる人がいないと言っていたけど、嘘だったのか」


「誰もが全て本当の事を話すなんてあり得ないだろう、徳之助君だってそうじゃないのか?」


「それはそうだけど・・・・」


「見た感じ君はイケメンだし、いくらでも彼女が作れるんじゃないか?

一層ハーレムを目指したらどうだい」


「そうかな・・・・はははは」


「しかし香澄はダメだ、何か気に入らない事があれば外で話しても構わないが?」


「嫌、何も無いよ」


「そうだ1つ約束がある、香澄の通う中学の生徒には手を出すな

、良いな?」


「分かった約束するよ」


「それでは今日はこれで、お近付きの印に俺がご馳走させて貰う」


レジへ向かうと香澄が支払いを終え店を出る所だった。

僕が2人分を払い外へ出ると直ぐに腕を組んで来る。


「あんな感じで良かったかな?」


「完璧だわ」


合気道や逮捕術をを使う様な大事に成らなくて良かった。

年上に見えたかなぁ?


「今でもすれ違う女性の眼差しが真に注がれてるわよ」


「香澄は大袈裟だよ」


実際、大した視線は感じていない


しかし、得意げな顔で真と並んで歩く香澄の足取りは軽やかだった。





































































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