第4話 我儘な許嫁

「席替えですか?」


「はい、西条駆流さんの隣に移動させて欲しいのです」


駆流の隣って僕の席の事かよ


「そうですね、諏訪さん」


「お断りします、この席が気に入ったので移動したくはありません」


詩音の表情が険しくなる。


「貴方が駆流さんの隣なんて、私は駆流さんの許嫁なのですよ」


許嫁なんていたのかよ


「貴方の入る隙なんて無いんですよ」


かなり思い込みが激しい様で、困った娘です。


「私は別に西条君の隣にいたい訳では無いんですけどね」


どうやら詩音は引き下がりそうに無い様だ、担任の梅田先生もどうしたら良いか分からず、成り行きを見守っている状態である。


「貴方の許嫁さんって随分と気が強いのね」


「普段はあんなじゃ無いんだけど、俺の事と成ると見境が無くなると言うか何と言うか」


普段からコミュニケションをしっかり取ってるのか?


「はいはいごちそうさま、惚気話は良いから責任持って収めてよね」


「俺が?」


「当然でしょう」


さて駆流の器量を知る良いチャンスかも知れない


翔琉が考え込んでる間に通路を挟んだ隣の女生徒が立ち上がった。


「あのう、私で良ければ交代しましょうか?」


「一色さん、それで良いかしら?」


担任の言葉に詩音は頷く。


席の交代はスムーズに行われ本日は終了と成ったのであった。


「もしかして、私嫌われて虐めとかに合うんじゃないの?」


私は駆流に小声で話しかける。


「そんな事は無いよ、詩音はとても優しい娘だからね」


「信頼してるんだね」


「2人共、何をコソコソ話してるんですの?」


「詩音の素敵な所を諏訪さんに教えて上げてたんだよ」


「そうでしたの」


詩音は頬を赤らめ笑顔に成った。


この男中々やるじゃないか


「諏訪さん、先程は失礼しました、改めまして一色詩音と申します。

一年間宜しくお願いしますね」


「諏訪真です、こちらこそ宜しくお願いしますね詩音さん」


詩音は確かに良い娘の様だが、闇の部分も濃そうだな。


「僕らはこれで、詩音帰ろうか」


「はい、駆流さん」


ふぅ、疲れた。



翔琉と詩音がいなくなると前の席に座ってる娘が話し掛けて来た。


「私は五十嵐華(いがらしはな)、貴方って凄いのね」


「何が」


「おっぱいが・・・・間違えた自分の意志をあそこまではっきり言えるなんてね」


ショートカットでボーイッシュな彼女は屈託の無い笑顔で目前まで乗り出して来る。


「ち、近い」


「華、真が困ってるわよ」


「ああ、ごめんごめん」


「五十嵐さんと香澄は知り合いなの?」


「私の事は華で良いよ、私も真って呼ぶからさ」


「分かったわ、それで」


「私と華は小学校でずっと同じクラスだったのよ、まさか中学でも同じに成るとはね」


「私と香澄は運命で繋がっているのだ・・・・あははは」


「はいはい、そろそろ帰りましょうか」


香澄の一言で鞄を持ち、立ち上がる僕と華だった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る