第17話 【二式スカラのレポート――6/15/09:55】

 モノレール駅から降りて地下連絡通路を進めば、いつの間にか騎士魔堂院の敷地内にたどり着いていることになる。

 騎士魔堂院とはここ一帯の地下区画を領内だと取り決めているだけで、その名称から連想されるような宗教的建造物がそびえ立っているわけではない。

 それでも騎士魔堂院のゲートとなる中央広場コンコースはそれらしい雰囲気の造形をしていて、旧世界の大聖堂めいた荘厳なファサードで来訪者を出迎えてくれる。

 先を行くエンデバーに隠れるようにして、おれも騎士魔堂院の院内を進む。

 ここは内装までもわざとらしい装飾様式に則っていて、複雑怪奇な彫刻が施された壁面やところどころに埋め込まれたステンドグラスなんかは、この組織で騎士を目指す若者たちを律する視覚効果があるのだと耳にした覚えがある。

 ひんやりとした院内の空気に触れるのはいつ以来だろう。

 この時間帯なら人影もまばらだけど、それでも講義や訓練に参加していない何人かの準騎士たちがこちらを不審そうに目で追ってくる。

 二式スカラの顔を記憶している人間がどれほど残っているのかもわからないけれど、おれを目ざとくガードしてくれたアリルの熱帯魚めいたファッションがめちゃくちゃ悪目立ちしたおかげで、結局は彼女に救われることになったわけ。

 もっとも、おれにとっての真の恐怖はこの先で待ち受けている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る