〜Ⅲ-終〜烏丸・焔丸・ナハトの成長
「無事だったんだな烏丸、焔丸」
「ナハト、服どうしたんだぁ?」
「うっ、これは…聞かないでくれ!」
両手で顔を隠したナハトに何かを察した焔丸は、それ以上ナハトに構う事無く口を開いた。
「この先道なりに進んだらライナーの城の入り口に着くかなぁ?」
「だろうな」
「俺は無視!?」
無視して話をされたショックをナハトが受けた瞬間、何か巨大な圧のようなものがナハト達に向かって迸って来る。
烏丸はとっくにそれを回避しており、焔丸も槍を安全地帯に突き刺して避難していた。
因みにナハトはすんでで左側に転がって無事である。
「今の、何だ?」
ナハトが一直線に抉れた地面に目を向けて何が起きたか確認しようとした。
「ライナーの右腕と言っていたディアスという男が入り口付近から『斬撃を飛ばして来た』ようだな」
「お前こっから見えんの!?ってか斬撃を飛ばすって何!?」
「剣撃には『剛の型・柔の型』がある、とガランノさんが話してくれた事があってな。斬撃を飛ばす、というのは『剛の型』に当て嵌まるのかと」
「???」
「…要するに剣圧を圧縮して飛ばして来たんだ」
ナハトに理解しやすいように烏丸が説明する。
ナハトも納得したのか頷いた。
「!また来る!」
「おわぁっ?!」
今度はX型の形をした斬撃が飛ばされて来た。
烏丸は素早く判断して安全地帯に逃れ、焔丸は斬撃を飛び越えるように槍を投げると同時に回避していた。
ナハトは流石に逃れる範囲が無く、ナイフを両手に構えて斬撃を防ぎ切った。
「っぶね…つか、攻撃範囲が広過ぎだろ…」
「どちらの斬撃が来るか予想しながら近付く必要があるか…密集していると回避し難い、散開して接近しよう」
「わかった」
ナハト達は散開して城の入り口目掛け走り出した。
尚も巨大な斬撃やX型の斬撃が不規則にナハト達を襲うが、それぞれ的確に判断してかわしたり防ぎ切ったりしながら遂に二本の刀を手にして入り口付近に立つ青髪のオールバックの眼鏡の男…ディアスに辿り着く。
「やぁ、少し見ない内に随分腕を上げたんじゃないか?まさか俺の攻撃が全く通用しないとは思わなかったよ…益々うちに欲しいぐらいだな」
人の良い笑みを浮かべながらディアスはナハト達を見回して言った。
「あんた以外まだ城に居るのか?」
烏丸の問いに、ディアスはちょっと困ったように答える。
「いやぁ、後はライナー魔王だけさ。他の兵士は皆『道』の先にすら行けて無いみたいだし…正直見くびっていたな」
「…あんたを倒せばラスボス、か」
「まぁ、そうなるかねぇ?」
じり、とディアスの行動を探るようにゆっくり動きながらナハト達は各々タイミングを計らう。
ディアスはナハト達を観察しながらゆっくり刀を構えて、踏み込み一瞬の隙に姿を消し――…
――ギャリッ――
――ギィン――
――ドシュッ――
辺りに三つ程音が響く。
そこには、ディアスの右腕の刀をナイフで受け止めるナハト、左腕の刀を蹴り飛ばした焔丸、そしてディアスの左肩を背後から射抜いた烏丸が居た。
「っ、おやおや…これじゃライナー魔王に顔向け出来ないな…」
だらりと機能しなくなった左腕を見てから、ディアスは小さく苦笑する。
右腕の刀を受け止めていたナハトは、ディアスの右腕に込められた力に少し足が押し戻される感覚を得て瞬時にかがみ込み左側に逸れた。
瞬間、ナハトが居た場所をディアスの右腕の刀が薙ぎ払うように空を斬る。
その隙を見逃す烏丸では無く、今度はディアスの右肩をすかさず射抜いた。
「っ!」
「まだまだぁ」
右腕も機能しなくなったディアスが思わず前かがみになると、そこには何時の間にか焔丸が潜り込み、鳩尾に強烈な一撃をぶち込んだ。
「ガハッ……!」
血反吐を吐いて地に倒れ伏すディアス。
それをちらりと見てから、ナハト達は城の中に潜入する事に成功した。
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