〜Ⅲ-Ⅱ〜タイムリミット

「―――で、愁円魔王は偶然助けたガランノとかいう超人に師事を受けて、今のところこうなった、と」

「ああ」


愁円の周りには様々な武器が転がっていたり、気絶した人物が転がっていたりと色々とカオスな状況である。

大半が自分の武器を愁円に試したり、模擬戦を挑んだ者達である。

因みに模擬戦を挑んだ者達は愁円がポンと頭を軽く叩いただけで脳震盪を起こし気絶中、という訳だ。


「…正直信じられないけど、あのディーゼルまであれじゃ信じるしか無いよね…」


ユーリスは地面に転がっている気絶中のディーゼルを見てから愁円に視線を戻す。


「その愁円魔王の状態なら無双も出来なくは無い…?」

「ユーリス王達には『道』を突破しに襲って来るライナーの兵士達の討伐を引き続きお願いしたい」

「うん、それは構わないけど…愁円魔王一人で挑むつもり?」


心配して見つめるユーリスに愁円は「まさか」と前打ってから答える。


「ライナー側にディアス以外の隠し玉が存在する可能性は十分ある。ガランノに師事して貰ったナハトと焔丸と烏丸は連れて行くさ」

「そっか…でも無茶は駄目だからね?」

「わかってる。心配ありがとうユーリス王」


―――――


「準備は?」


「出来てるよ」

「ガランノさんが相手じゃ無いならもう怖くないなぁ」

「確かに…」


愁円が戦闘服に着替えてナハト達の待つ広場に向かうと、既に三人共に準備を終えて待って居た。

さて出立、という雰囲気が流れそうになるが、愁円がいきなり何処かに向かい歩き出したのでナハト達三人も疑問を感じながら付いて行く。


「愁円魔王、何処に行くんだ?」

「そっち『道』じゃないなぁ」

「来たらわかる」


ナハト達の質問に簡潔に答え、愁円はどんどん森に向かって進み、やがて開けた場所に辿り着く。

ナハト達はキョロキョロと辺りを見渡し、ふと真ん中に生えた花の茎に気付いて近寄る。


「…これ、花の茎か?」

「そうだ」

「じゃあここにユエさんが…。…待って、ちょっと茎が萎れかけてないかぁ?」

「!?」


焔丸の言葉に愁円は弾けるように茎に近寄る。

確かに、僅かばかりに茎が萎れかけているように見えた。


「…急ごう」

『了解』


走り出した愁円をナハト達が追って行く。

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