〜Ⅲ-Ⅰ〜同盟国会議
「やぁ久し振り愁円魔王。…あれ?何か雰囲気変わった?」
「ユーリス王、久し振りだな…来てくれたのか」
「同盟国の王は粗方来てるよ?同盟国会議が丁度行なわれるから良かった間に合って」
ユーリス、と呼ばれた『紫蛸(むらさきだこ)の国』の王が愁円に気付いて話しかけて来た。
ユーリスの隣にはユーリスの双子の弟王のシェズも居て、訝しげに愁円を観察している。
「…どうかしたかシェズ王?」
「……いや、本当にあのメンヘラおじさんかと思ってね」
「ちょっとシェズ!失礼でしょ!毎回毎回!」
「はは……色々あって流石にメンヘラメンタルじゃ無くなってな」
「色々?」
「それは今のところ話さなくて構わない内容さ」
詳しく聞きたそうなユーリス達の興味をはぐらかし、愁円は同盟国会議を行う『和の魔界』の大会議室に向かう。
そこには既に粗方の同盟国の重鎮人物や王自らが出向いて椅子に座っていた。
愁円は一番目立つ席に腰掛けると、ぐるりと皆を見渡し口を開いた。
「皆さん、今回は我が魔界の危機に協力してくれてどうもありがとう」
「何だい愁円魔王、同盟国としてもだけど、『洋の魔界』に万が一愁円魔王が負けちゃったら次は俺の『金鹿(きんじか)の国』が狙われる可能性があるんだから協力は惜しまないよ」
茶化すように口を開いたのは、ユーリスの国とも親交のある『金鹿の国』のクノール王だ。
周りの他の面子も『そうだそうだ』と頷いたりしている。
「それで、どうすんだ?反撃には打って出ないのか?」
次に口を開いたのはやはりユーリスの国とも親交のある『青獅子(あおじし)の国』のディーゼル王。
「正直、このまま攻防しててもジリ貧だろうしね、何とか反撃したいよなぁ」
「その問題なんだが、俺がライナーを討つ」
「…へ?」
「ぁ?」
『ハィイッ!!?』
何を言い出すんだこいつ?!という勢いで会議室の面子全員が叫んだ。
「…ユーリス王」
「へっ、あ、何かな…?」
ユーリスに向かい愁円が近づく。
「俺にナイフを刺してみてくれ、腕に」
「はぁ!?どうしたの急に、トチ狂った?!」
「いいから刺してみてくれ、そうすりゃわかるから」
「…どうなっても俺は責任取らないよ?」
ユーリスが渋々懐から愛用のナイフを取り出し、愁円が差し出した腕に突き立て―――…
「…は?何これ?刺さらないんだけどぉ!?」
『なぁっ?!』
グイグイと愁円の腕にナイフを食い込ませようとするが、ナイフの先は微塵も傷痕さえつく様子が無い。
目の当たりにした光景に、会議室の面子全員が素っ頓狂な声を上げた。
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