〜Ⅰ-Ⅲ〜謁見
愁円が王の間の玉座に座り、暫くしてから。
二人の男が夕星に連れられて来た。
片方は腰に二本の刀を携えた、青髪のオールバックで眼鏡をかけた男。
ぱっと見は温厚に見えるが、眼光は鋭く、愁円を観察しているように見える。
もう片方は、銀色のマントを羽織り、黒を基調とした服に銀色のライオンの刺繍を施した、片目に眼帯を着けた隻眼の男。
「『和の魔界』にようこそ。不躾かもしれないが、お二人の名前や目的を聞きたいんだが」
愁円が玉座から二人を見下ろし質問する。
その質問に、青髪のオールバックの男が答えた。
「俺はディアスという。こちらに居る魔王ライナーの右腕…と俺達『洋の魔界』では呼ばれている」
ディアスと名乗る男は隣に居る隻眼の男を示してから愁円に視線を戻す。
「…魔王ライナー…か。何故わざわざ『道』を通りこちらに来たのか聞いても?」
愁円の問いに、隻眼の男…魔王ライナーが口を開いた。
「新たに世界に現れた『道』の先に国が見えたのでな。調査に来た」
ライナーの答えに、訝しげに愁円は問いを重ねる。
「調査にわざわざ魔王自身が来るのは、些か問題ではないか?普通は諜報員などに任せると思うのだが…」
問われたライナーは、愁円を見据えて答える。
「国があるなら、国を統治する者が居る筈。俺は国を統治する者に用があるので自ら出向いた」
それを聞いた愁円は、更に嫌な予感が的中したかもしれないと思いつつ質問を続ける。
「ならば、ライナー殿の用件とは?」
問われたライナーは、当然とばかりに答えを返す。
「簡単な話だ。我が魔界の軍門に降るつもりはないか?」
「…は?」
ライナーの答えに愁円は思わず顔を顰めた。
そんな愁円の態度を気にする様子も無くライナーは続ける。
「この国は見た所、かなり平和ボケしているようだからな。俺の魔界の軍門に降るなら、未曾有の脅威が起きてもどうにかなるかもしれんぞ?」
「…ライナー殿。その話は俺から見れば、『侵略したい』と言ってるのと同じなんだが」
愁円の言葉にライナーはフッと小さな笑みを浮かべる。
「愁円魔王…貴殿が争いを嫌い平和的解決を望む人だというのは夕星という俺達をここに案内してくれた人から聞いた。だから俺は平和的解決の案を出した。俺は数々の国を吸収合併して自国を繁栄させてきた。貴殿の国もその一つに加えたい、というのが俺の目的だ」
ライナーの身勝手な言葉に愁円は怒りを抑えつつ言う。
「…断る、と言ったら?」
「武力行使となるな」
あっけらかんと言い放つライナーに、手が出そうになるのを我慢しながら愁円は答える。
「…いくらなんでも急過ぎる。考える時間が欲しい」
「……ふむ。ならば一週間後にまた貴殿の答えを聞かせて貰いたい。俺の用件は済んだので今日はお暇しよう」
自分勝手にさっさと話を終えて、ライナーはディアスを連れて帰って行った。
残された愁円に、ナハトや焔丸達が声をかける。
「…愁円魔王、どういたします?」
「おれは今回ばかりは平和的解決には難しい気がするなぁ…」
暫く愁円は考え込んでから、ナハト達を見て言った。
「一週間の猶予はある。夕星はトキ達にこの件を伝えて国の防衛を強化してくれ」
「了解だなー」
直ぐに行動に移る夕星を頼もしく思いながら、愁円はまた窓から外を眺めてライナーの発言を思い返す。
(大人しく軍門に降るとして、待遇がいいとは思えない…どうしたものか…)
窓に映る愁円の青い瞳に、黒い影が差したように見えた。
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