第4話

「王様、プリンセスです」


 と、プリンちゃんが言った。


「入れ」


 という声が返ってきてから、プリンちゃんはふすまを開ける。


 その向こうには、だだっ広い空間が広がっていた。たぶんテニスコート一枚分くらい。床には畳が敷きつめられていて、壁は金色に輝いている。


 そこに描かれているのは、踊りくるったマツの木。その枝には、見たことのない生き物がとまっていた。ツルツルとしていて見た目はコウモリのよう。


 でも、あるべきところに顔がなかった。


「――あの」


 プリンちゃんの声に、我に返った。


「なにをぼーっとしているのですか」


「あーごめんごめん。あの絵が気になっちゃって」


「……王様がお待ちです。殺されても知りませんよ」


「殺されるってそんなまさか」


「そうだぞ」


 と、奥の方から声がする。


 一段高くなっている場所に、人がいた。


 そこに座っていたのは、先ほど会ったお侍さんであった。


「私がそのようなことをいつした」


「ですが、失礼に値すると、部下の人たちはよく言っていますよ」


「まあ、あやつらなりに心配しておるのだろう。――それはさておき」


 唖然としていたわたしを、お侍さんが見てくる。


 彼の格好はさっき会ったときとは違って、すごく豪華だ。思わずため息をもらし、見つめつづけたくなってしまうほどに。


「私が、このヴァクワクの王ということになっている、ニュニギだ」


 そう言って、お侍さんが頭を下げる。


「先ほどは助かった。貴女が現れなければ、私はどうなっていたことか」


「そ、それほどでも……?」


 わたしは頭をかく。王様に褒められて嬉しくないわけがない。


 本当に王様だったら、だけれど。


「ニュニギさんは、王様なんですか」


「ああ」


「今の日本には王様っていないって聞いてたんですけど。ここはもしかして、日本ではない……?」


 わたしが言うと、ニュニギ王とプリンちゃんが顔を見合わせる。


「ニホンというのは、覚醒の世界のことか?」


 そう聞いてきたニュニギ王に、わたしは頷く。


 みょうなことを聞くもんだ。日本といったら日本以外にありえないじゃないか。


 でも、それよりも気になる単語があった。


「覚醒の世界って?」


「ここは夢の世界、それとは反対の世界を覚醒の世界という。もしかして、そんなこともわからないの?」


「わからないよっ、そんな当たり前のことみたいに言われたって」


 わたしが言えば、プリンちゃんは目をまるくさせていた。本当に、びっくりしているって感じだ。何をそんなに驚かれているのかがわからない。


 というか、いまさらって感じなんだけど。


「ここ……どこ?」

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